WAN接続


  1. ダイアルアップ交換
    1. WANと電話網
      電話は世界を接続するネットワークです。電話線の両端にPCを接続すれば、世界レベルのネットワークを手軽に構築できます(電話代が気になりますが)。
    2. 電話と交換局
      1. 専用線
        電話局の交換機は二つの電話機の間を直接電話線で接続します。電話の音の品質が悪いのは、主に交換機の間の線が周波数多重で分割されるため、帯域制限されているためです。
        1. 交換機による接続
          交換機はダイアルした電話と指定した電話番号の電話機の回線を接続します。接続している間は独占的に利用できますから、接続時間で課金されます。



    3. 電話線
      1. 電話線(アナログ:有線)
        1. 電話線
          電話線にはイーサネットと同じくツイストペアケーブルが利用されます。直径は0.32-0.9mmです。
        2. 送受信の原理
          電話機は1対のペアケーブル(撚り線)で双方向の音声通信が可能です。送信と受信はハイブリッド回路で分離します。電話線の電流は双方の送信器で変調され、双方が同時にしゃべれば混合した音声になります。ただし、受話器に流れる電流は自分の送信機の信号で抑圧し、ハウリングを防止します。
        3. 接続手順
          ○受話器を上げるとフックスイッチがONになり、電話線に電流が流れる。
           交換機は400Hzのダイアルトーンを流す
          ○ダイアル信号を流す
          交換機は呼び出し先に75V、16Hzの呼び出し信号(1秒送り、2秒停止)を送る。発信側には400Hzの断続音(リングバック)を流す
          ○呼び出し先が受話器を上げると双方の回路を接続する。
           交換機は一方が受話器をおろすと、接続は切り離す
        4. ダイアル信号
          1. パルス
            0.1秒間隔のパルスの数でダイアルする。休止間隔0.6秒
          2. トーン
            3列4行の行列ごとに697-1477Hzの異なる周波数を割り当てる。ボタンを押すと二つの周波数の混合信号となります。
      2. コードレス電話
        1. 小電力
          10mW以下の小電力型が多く利用されます。子機から親機は250MHz帯.親機から子機は380Mhz帯を利用します。変調方式は周波数変調方式です。
        2. チャンネル
          チャンネル数は89で、あいているチャンネルを利用するマルティチャンネルアクセス方式です。
        3. ID
          24bitのIDを持ち、同一IDでのみ交信できます。ただし、IDは企業管理なので、異なる企業間で誤接続する可能性があります。
    4. 電話線によるWAN接続
      1. モデムとその機能
        計算機とディジタル信号を交換します。
        ダイアル信号を流し電話機と接続する。
        文字などのディジタル信号を音に変換し電話線で送信する。
        音に変換された信号をディジタル信号に変換する。
        現在、電話交換網を通過するモデムの最高速度は56kbit/秒程度です。
        1. BOX型モデム

      2. 電話線との接続
        電話線は音声(耳で聞こえる信号)しか送れません。モデムはディジタル信号を音声信号に変換して送受信します。(faxの”ピーポージャー”の音は、ディジタル信号を変換した音)
        1. RS232C:モデムの接続
          外付けのモデムとは通常RS232Cで接続します。RS232Cは昔は計算機の標準的な接続インターフェースとして利用されてきました。windowsのデスクトップではCOM1とCOM2の名前で2本のRS232Cが標準装備されています。このどちらかとモデムを接続し、モデムのドライバを組み込みます。
          1. 図 モデム接続


          2. モデムとNTT
            モデムの最高速度は電話回線の状態に依存します。NTTが(たぶん)公式に認定しているデータ通信速度は9600BPSまでです。
        2. RS232Cとは
          RS232C は送・受信を各一本の信号線で行うための国際的な規格であり、低速度ではあるが標準的に装備されている通信(データ交換)方法である。RS232C は 6〜8ビットで構成される1文字の符号を下位ビットから順に一定時間間隔で送り出すことにより一本の信号で送出する。各ビットは時間的に直列に送信されるので、直列(シリアル)信号となる。各ビットは一定時間間隔で送出され、符号の先頭に符号が始まることを示す論理値 0 の区間を、また、最後に1時刻以上の論理値 1 の区間を設ける。
          1. 図 1文字のタイムチャート

          2. 図 連続する3文字

          3. RS232Cを設定するには
            1. RS232Cのパラメータ
              データのビット数、時間間隔(BPS)
              ストップビットの長さ(1、1.5、2)、パリティの有無
               現在、データのビット数は8、ストップビットの長さは1、パリティは使用しないことが多い。BPS はモデムの性能で定まります。パリティは文字データとパリティビットの合計の1の数が偶数、または、奇数になるよう調整するビットで誤り検出の手法として利用されました。
            2. 伝送速度とは
              各ビットを送り出す時間間隔は秒当りのビット数(BPS: Bit Per Second )で指定されます。RS232Cではこの値は
              300、600、1200、2400、4800、9600、..
              に限定されている。現在では 14400、28800 が主流となっています。
      3. インターネットサービスプロバイダー
        プロバイダーは専用線を借用し、インターネットに常時接続しています。プロバイダーと契約した利用者は、プロバイダーまでモデム経由でデータを送り、プロバイダーの通信サーバーを利用してインターネットにパケットを送ります。
        1. 電話によるISP(プロバイダ)接続
           家庭などからインターネットに接続するにはISP(Internet Service Provider)を利用します。ISPにはモデムを利用して電話線で接続します。
        2. ppp接続
           ppp接続方式を利用して電話線をLANへの接続線のように利用できます。パソコンからLANに直接接続しているような感じで、電子メールやwwwが利用できます。ppp接続ソフトはデータをパケットに分解して送り出します。
          1. プロバイダ接続

        3. ISPとの接続に必要な情報
          1. トーン/ダイアル
            接続する電話線のダイヤルがパルスかトーンかを調べておく必要があります。ダイアルするとき、ピポパと音がでる場合はトーン回線、ブツブツとダイアルする数だけ音が出る場合はパルス回線です。
          2. 電話番号、ユーザ番号
            ISPのアクセスポイントに接続するための電話番号です。モデムや通信ソフトにお試しサービスの案内があり、そこで電話番号を調べます。正式に加入するとユーザ番号とパスワードが通知されます。
            (その他にデータビット長、ストップビット数、パリティ等の指定がありますが、ほとんどのパソコン通信で同じなので、気にする必要はないでしょう。)
    5. ダイアルアップ接続の設定
      1. 接続方式(ppp)
        電話線を経由してサーバーと接続する場合、ppp(point to point protocol)を利用します。これは、TCPのパケットをそのまま送る方式で、多重アクセスの処理が不要になります。
      2. モデムの確認とダイアルプロパティ
        1. モデムの確認
          ダイアルアップで接続するには、モデムが接続され、モデムのドライバが登録されている必要があります。利用可能なモデムは、スタートメニュー>設定>コントロールパネル>電話とモデムのオプション>モデム で確認できます。 
        2. ダイアルのプロパティ
          「電話とモデムのオプション」のダイアル情報で、所在地の名前と市外電話番号、「ダイアル方法」を設定します。
      3. 「新しい接続」を作成する
        wuindow2kでは、マイネットワークを右クリックし、プロパティのメニューから「ダイアルアップネットワーク」ウィンドウを表示します。「新しい接続」をクリックします。(ウインドウ95/98)では、マイコンピュータに「ダイアルアップ接続」があります。
        1. 新しい接続

      4. 接続ウイザード
         接続ウイザードが、設定を案内します。ここでは「手動で設定」を選択します。「電話回線とモデム」を選択します。
        1. 電話番号、ユーザ名
           プロバイダの電話番号、ユーザ名とパスワード、接続名(プロバイダを示す適当な名前)を設定します。
           次に、メールアカウントの設定を確認するウインドウが表示されます。ここでの設定はoutLookなどの設定に利用できますが、他のメールソフトを利用する場合、「いいえ」で完了します。
        2. プロパティ
          これで、ダイアルネットワークのフォルダに指定した接続名のアイコンができます。次にこのアイコンを選択し、ファイルメニューのプロパティをクリックし、ネットワークの設定をします。設定ウインドウの上部にある、「全般」、「オプション」、「ネットワーク」など、..をクリックして、必要な項目を指定します。
          1. ネットワーク
            先頭の「呼び出すサーバーの種類」が ppp:.. であることを確認します。インターネットプロトコル(TCP/IP) のみにチェックをつけます。
          2. TCP/IPのプロパティ
            ここでは、IPアドレスとDNSを自動取得に設定します。プロバイダーによってはDNSは手動で設定するよう依頼される場合があります。
      5. 利用認証
        設定に従い、ISPに電話をかけ利用者番号とパスワードを送り、利用手続きを完了してくれます。この自動設定にも各種の方法があります。
        1. PAP方式
          windows標準の認証方式で、接続ウイザードで設定するとこの方式の認証を行います。
        2. ログイン方式
          接続アイコンのプロパティより、セキュリティの項目で対話型ログオン方式が指定できます。また、この対話型もスクリプトファイルを作成すると、自動化できます。
      6. 接続
        1. 一般的な接続
          「ネットワークとダイアル接続」ウインドウから、接続するアイコンを右クリックして、接続ウインドウを開き、「接続」ボタンを押します。サーバーに自動ダイアルして接続し、アカウント(パスワード)の認証を受け、適合すれば、接続が開始されます。これで、ブラウザやメールソフトが利用できます。
          1. 接続ウインドウ

        2. アプリケーションからの接続
           webのブラウザやメールソフトで、立ち上げ時にダイアルアップ接続を開始するよう設定することもできます。
      7. その他
        1. 発信番号
          ホテルや会社の内線からダイアルアップする場合、先頭に市内や市外への外線発信番号を付加する必要があります。これは、コントロールパネル>電話とモデムのオプション から設定できます。
        2. 対話型ログイン(海外の場合)
          海外にアクセスポイントのあるプロバイダーに加入している場合、海外でダイアルアップ接続が可能です。海外の場合、ユーザーIDに追加情報が必要な場合もあります。また、接続の認証が、自動(PAP)方式でなく、「対話型ログオン」となる場合があります。
  2. N-ISDN
    1. ISDNとは
      アナログ電話線を利用したディジタル電話機能です。ディジタルでは64KBの2回線の伝送容量があります。TA(Terminal Adapter)を介してアナログ電話機を2台まで接続することができます。また、USBやシリアルでPCと接続します。
    2. 接続方式
      ISDNは世界的に利用されている方式ですが、NTT方式とヨーロッパ方式とでは異なります。
      1. NTT:ピンポン方式
        1秒間に400回上りと下りを切り替えて、送受信を行います。ピンポン方式とも呼ばれる。伝送速度の倍以上の線路速度が必要になる。
      2. ヨーロッパ:エコーキャンセル方式
        送信受信信号を混在させ、ハイブリッド回路で分離します。周波数が高くなると、ハイブリッド回路から送信信号が受信側に漏れてします。そこで、漏れ分を計算し、受信信号から差し引く方式のがエコーキャンセル方式です。これにより、電話線の帯域を有効に利用できますが、キャンセル回路が必要になる。
    3. 接続速度
      アナログ電話の場合と異なり音声変換は不要です。TAを利用してプロトコル変換でプロバイダと接続しますが、アナログモデムが32KB/秒以上に高速化し、xDSLがMBクラスの速度が利用できるのにたいし、ISDNの速度は少し不充分です。
       ISDNは64kBPSが2回線利用できますから、1回線でディジタル通信、他の1回線で電話を利用したり、2回線を利用して 64kBPS*2 の速度でディジタル通信をすることもできます。
    4. 接続機器
      モデムでなく、TA(Terminal Adapter)を利用します。TAとPCはモデムと同様にRS232CまたはUSBで接続します。TAのドライバーを登録すると、モデムの場合と同様に接続できます。
       モデムとの差はダイアルして接続する時間が短いこと、エラーによる切断がないことです。TAはモデム装置と同様に組み込むことができます。
      1. TA

  3. ダイアルアップの位置づけ
    1. 物理層
      ダイアルアップは、ネットワークでは物理層に対応します。PPPプロトコルなどでダイアルアップサーバーに接続した後は、IP層に接続します。
      1. ダイアルアップ

    2. 接続料金
      プロバイダーには、月当たりの固定料金と接続時間に応じた接続料金を支払います。この他に電話料金が必要です。最近は、プロバイダーや電話料金とも、固定料金で時間制限のない利用が可能です。
  4. CATV、ADSL接続
    1. ADSL接続
      ADSLは電話線をイーサケーブルのように利用します。電話の信号とはスプリッタで分離します。インターネットとの接続は電話局内で分離し、直接プロバイダーに接続します。したがって、電話網で利用するには電話線だけになります。
       ISDNは電話線を利用したディジタル通信ですが、この信号は高調波成分を含むため、ADSLの信号と共存できませから、ISDNを利用している場合、ADSLの利用は出来ません。
       また、ADSLでは中継なしで電話局に送られますから、電話局との距離が長いと、伝送速度は低下します。公称8MbpsのADSLでも1Mbpsの速度を確保出来るのは電話局との距離が3km以内です。
    2. CATV接続
      CATVはケーブルを利用してTVの信号を配送しますが、余っている帯域を利用して、TCP/IPのネットワーク信号を流すことが出来ます。通常、イーサのアダプタからCATV接続するケーブルモデムを通して、CATVのケーブルに接続します。
       CATVの場合、信号は中継器を通して送られますから、接続地点による伝送速度の差はありませんが、チャンネルに制限があるため、利用者が多いと伝送速度が低下します。
    3. FTTH
      光ファイバーにより接続します。電気信号と光を相互に変換するアダプタが必要ですが、光ファイバーは現在最も優れた伝送方式です。最近、一部で光ファイバーの個人住宅への配送サービスが開始されました。
  5. まとめ
    1. 電話
      電話は(これまで)最大規模の専用線方式のネットワークです。
    2. モデム
      モデムでディジタル信号を音声信号に変えてISP(プロバイダ)と接続します。
    3. ISDN
      ISDNはディジタル信号で音声を送ります。TAを用いてディジタル信号を直接送受信できます。モデムより高速な接続ができます。
    4. ダイアルアップ設定
      ダイアルアップの設定をすると、自動ダイアルでISPと接続し、認証処理を行います。接続にはPPPプロトコルを利用します。
    5. ADSL
      ADSLは電話線をイーサケーブルのように利用します。周波数帯の差を利用してディジタル信号と音声信号を分離します。

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