弓曳童子

  1. 弓曳童子


    1. からくり儀右衛門

       「弓曳童子」はからくり人形の最高傑作ちも呼ばれます。江戸時代末期を代表する 「からくり儀右衛門」とよばれる 田中久重 の作品です。儀右衛門の跡をついだ2代目は、「東芝」の前身の「東京芝浦電気」を創業しています。

    2. 弓曳童子

       矢立から矢を引き抜き、弓を曳き・放つ の一連の操作を繰り返し実行します。顔も動作に合わせて動きます。一連の動作は7枚の「カム」で制御されます。

      http://www.auto-g.jp/news/200502/15/event02/ より

      したは、下は、「からくり人形師九代目玉屋庄兵衛」氏が復元された弓曳童子です。
      http://www.geocities.jp/aichiguide/guide07/karakuri.html

  2. 機巧


    1. 学研からくり

       以下は、「学研」の「大人の科学」から販売された、「弓曳童子」の紹介です。


      下は、「童子」の動きのビデオです。三角の再生ボタンで再生を開始します。IEでないと、ビデオ表示できないようです。



    2. 動力、カム部

      エンジンは「ぜんまい」の復元力で、田中久重 の原版も 「はがね」 とのことです。「テンプ」による調速機構ではなく、プロペラのような輪を回して、高速時の回転を抑えています。
       制御は、7枚のカムとカム板です。カムでカム板を上下し、弓以外はカム板に接続した糸を引いて、微妙な動きを制御しています。

       
       カム(白い回転部)とカム板 http://kawai3.hp.infoseek.co.jp/karakuri2.html より

      下の図が全体です。

        組み立て説明書より
      番号 機能 説明 調整
      左腕(弓)の動作 左腕の伸縮、糸でなく直接駆動 調整不要
      右腕 右腕の上げ
      右腕の右回転 糸を張ると右回転 2時で右ストッパー
      頭の動作 頭(顔)の回転 2時で正面
      右腕の左回転 糸を張ると左回転 6時で左ストッパー
      親指を閉じる 親指を閉じる、ロックがかかります 4時で親指ロック
      引き金 親指のロックを解除し、矢を放ちます 10時でリリース
       調整のx時は、カムの回転角度に相当します。下図は組み込み後、頭を出しているカム板です。

      再生ボタンを押すと、カムの部分のビデオをご覧いただけます。



    3. 糸かけと調節

       狭い空間で、ピンセットを使った結び作業が必要です(うまくできたら、内視鏡の手術ができる?)。「二度とやりたくない」ほど、手間がかかります。
      カム板には、糸の長さを調節する機構(ペグ)があり、これを回して糸の長さを調整します。「一度調節すればおわり」とはいかづ、根気よく調節しなおす必要があります。

       

    4. 矢送り

       1本矢を抜いたら、次の矢を送るしかけは、ぜんまいでなく「錘(おもり)」を利用しています。矢立を先に錘のついた糸で引っ張ります。1本抜くと、次の矢まで回転します(これもときどき失敗します)。
       
      「童子」を上から見たビデオです。再生ボタンを押してみてください。



    5. 製作、調節


      1. 駆動部、カム

         ゼンマイに逆転防止をつけ、カムを連装するところは比較的簡単です。カムの形状を眺めながら、「よく仕上げたもんだ」と感心します(2〜3時間)。
         問題は、糸かけ、特に両端の縛りです。指が入りませんから、ピンセットや針での慣れない作業になります(2〜3時間)。
         仕上げの調整も、簡単ではありません。一度うまくいっても、動かすたびに調整が必要そうです。糸を調整する「ペグ廻し」は必需品ですが、特殊工具ですからなくさないよう注意しましょう。

      2. (私的)調整法

         前方にある、回転しているプロペラ(のようなもの)を指で邪魔して一時停止をします。最初に、矢を取りに右手が下がったところで一時停止、開いた親指との間に矢が入るよう矢立を調整します。調整した後でもセットした矢の状態が悪いと、ちゃんと取ってくれません。矢には弓の弦をひっかけるトゲがあり、これを右にします。


         手を上げる前に親指を閉じてロックする必要があります。6番カムで引っ張るとロックがかかります。うまく、持ち上げ弓の弦に引っ掛けます。左手が伸びきったとき、7番カムでロックをはずします。「たまには、失敗しないと、成功したときの拍手がこない」くらいの心構えが必要です(??)。