論理式を簡単化しよう


  1. 論理式の簡単化


    同じ機能でも、部品や素子数が異なる回路が存在します。ここでは、回路を実現するとき、より簡単になる論理式を導く方法について考えます。論理式の性質より次のような簡単化の公式が導かれます。

    1. 簡単化の公式


      [公式:簡単化1]
           A・B + A・^B = A
      この式は、Aが1ならBが0でも1でも式の値が1になるばあい、Bは無意味(冗長)であることを示します。

      [証明] 
      これは
             A・(B + ^B) = A・(1)
      より簡単に導かれます。

      [公式:簡単化2]
           A + A・B = A ;  A・(A + B) = A
      この式は A が 1 のとき式の値が 1 であれば、A に制限を付けた項(A・B)は冗長であることを示す。

      [証明]
       A+A・B = A・1 + A・B = A・(1+B) = A・1 = A
       A・(A+B) = A+A・B = A

      [公式:簡単化3]
           A + ^A・B = A + B   A・(^A + B) = A・B
      この式の意味はAが1のとき式の値は他に無条件に1になりますから、Bに対する^Aの条件付けは不要であることを示します。第二式の導出は簡単でしょう。

      [証明]
      最初の式は次のように証明できます。^A・BをBにするには、A・Bの項が必要です。A・Bの項は、Aを分解して作成できます。
      A + ^A・B = A・(B + ^B) + ^A・B = A・B + A・^B + ^A・B
      = A・B + A・B + A・^B + ^A・B = A・(B +^ B) + B・(A + ^A)
      = A・1 + B・1 = A + B

      [公式:簡単化4]
      X・Y + ^X・Z + Y・Z = X・Y + ^X・Z
      (X+Y)・(^X+Z)・(Y+Z) = (X+Y)・(^X+Z)
      この式は、Y・Zなら、 X・Y + ^X・Zは必ず1になりますから、Y・Zは省略可能であることを示します。

    2. 簡単化の手法

      これらの簡単化の公式も、実際には
          A・C + C・D + ^A・B・C
      のように式の一部に現れます。
          C・(A + ^A ・ B + D) = C・(A + B + D)
      と簡単化するにはある程度の訓練が必要でしょう。

      問題 1
      簡単化公式を代入法(しらみつぶし法とも言います)で証明しなさい。

      問題 2
      次の、各論理式を簡単化しなさい。
       (a)A・B・^C + A・^B・C + A・B・C
       (b)A・^B・^C + A・^B・C + A・B・^C + A・B・C

  2. 図による論理式の簡単化

    論理式を簡単化するには、図を用いた直感的な手法があります。

    1. 3変数の積を図で表現する

      図のように、8個のマスを作り、左半分をA=1の領地、中央半分をB=1の領地、上半分をC=1の領地とします。すると、上段の左端のマスは、A,Cの領地であり、Bの領地ではないので、 A・^B・C と対応付けをすることができます。同様に、下段左から2番目のマスは、A,Bの領域でCの領域でないので、 A・B・^C となります。


      問題3
      他の適当な3個のマスに対応する論理積を求めて下さい。

    2. 連結したマス

      また、下のように連続する二つのマスを併せた領域は、A・Cの領域となります。これは、
       A・^B・C + A・B・C=A・C に対応します。



      問題4
      A・B、および、Cに対応する、連結したマスを求めなさい。Cの領域は4個のマスになります。

    3. 論理式を図で表現する

      一般に、論理式は論理積された項の論理和の形式になります。論理積の各項に対応するマスに1を記入すると、論理式 X = A・^B・C+ A・B・C+ A・B・^C+ ^A・B・^C は次のように、1のマスが4個の図で表現できます。


    4. 図を利用して論理式を簡単化する

      4個の1は、連結された2つの領域で表現できます。上段の領域は A・C、下段の領域はB・C となります。従って、この論理式は、二つの連結したマスの論理和として、
         X = A・C + B・^C
      として表現できます。


      上の長方形が A・^B・C+ A・B・C に対応し、下の長方形が A・B・^C+ ^A・B・^C に対応します。簡単化できる項の組み合わせが、図を利用すると 隣り合う二つのマスに対応します。

    5. こんな連結もあるよ

      うっかりすると、見落としてしまう連結もあります。下の図で、左は、^B・C 、右は^Bとなります。


      問題5
      次の式を、図を用いて簡単化して下さい。
       X = A・^B・C+ ^A・B・C+ A・^B・^C+ ^A・B・^C
      また、簡単化公式を用いて簡単化して下さい。

    6. 4変数の場合

      ちょっと面倒ですが、縦方向も2変数とし、領域を4区分すると、4変数の図が作成できます。


      問題6
      次の図に対応する出来るだけ簡単な論理式を求めて下さい。

      ヒント:左は2変数の項が二つ、右は2変数が1個3変数が3個になります。

      問題7
      次の式を簡単化しなさい。
       A・^B・C・^D + A・^C・^D + B・^C + ^C

    7. 限界

      この方法では4変数までが限界です。5変数以上を見た目に分かりやすく表示する方法がないからです。また、この図を考案者に因んで、カルノー図とか、ビッチ図などと呼ぶことがあります。

  3. レポート課題、アンケート


    1. 課題

      次の、各論理式を図を用いて簡単化しなさい。作成した図を示すこと。
      提出 次週、講義の前に提出すること。

       (a)A・B・^C + A・^B・C + A・B・C

       (b)A・^B・^C + A・^B・C + A・B・^C + A・B・C

    2. アンケート

      1.式の変形による回路の簡単化は理解できましたか?

      1.ほぼできた 2.少しわかった  3.よくわからん

      2.図による回路の簡単化は理解できましたか?

      1.ほぼできた 2.少しわかった  3.よくわからん


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