ネットワーク(1)


  1. ネットワークとは


    1. ネットワークとは

      複数の計算機を結合した構造をコンピュータネットワークといい、ここではネットワークと略称します。計算機を利用しない人と人との情報交換網もネットワークですが、ここでは、計算機間のネットワークを紹介します。
       計算機データを送る伝送路(媒体)には、電線、光ファイバー、無線などが利用できます。ネットワークでデータを送るには一定のルールが必要で、これをプロトコルと呼びます。

    2. 身近なネットワーク

       インターネット(ホームページ)、JRの新幹線の切符の約・販売、銀行の現金自動預払機(ATM:automated tellers machine)、コンビニの商品管理システムなどは、高度なネットワークシステムに支えられています。

    3. サーバー&クライアント

       ネットワークを利用してサービスを提供する計算機をサーバー(Server)、サービスを依頼する計算機をクライアントと(Client)といいます。ネットワークシステムは多くの場合、サーバー&クライアントのシステム構成になっています。wwwのばあい、各種ブラウザがクライアントになり、サーバーは Apach などがよく利用されます。

    4. インターネット

       現在世界的な拡がりをもつインターネットは、1969年のアメリカのARPANETが基礎になっています。1980年台にTCP/IPと呼ばれる通信方式がARPANETで採用され、1990年代にはインターネットサービスプロバイダ(ISP)と呼ばれる業者に運営が任されるようになりました。
       日本では1980年代JUNETがインターネット接続を開始し、1987年にはWIDEプロジェクトが開始され、インターネット接続の母体になりました。インターネットはISPとそれらを接続するIX(Internet Exchange)によって構成されます。IXは東京、大阪の大都市に集中設置されていますが、地域IX建設の動きがも高まっています。

  2. イーサネット


    1. イーサネットとは

      テキスト:p276
      ハワイ大学Alohaシステムが原点、1972年Xerox(ゼロックス)のパロアルト研究所で開発、1980年のDEC、インテル社とともに開発、 IEEE802委員会で Ethnet1.0 として公開しました。

    2. ネットワークの構造

      ネットワークトポロジー テキスト 278
      現在多くのLANはHUBを中心としたスター型で構成されます。
       
    3. 通信規約(プロトトコル)

       ネットワークには物理的な通信方式だけでなく、データを送受信する方法の策定が必要です。この規約を プロトコル と呼びます。現在、webやメールなどインターネットで良く利用されているプロトコルは TCP/IPです。

  3. ネットワークアーキテクチャと伝送路


    1. アーキテクチャとOSI参照モデル

       OSIはネットワークのアーキテクチャを系統的に扱う手段として、1983年にISOから提案された規約です。1層から7層まで階層的に分類されています。1層が物理的な伝送手段の規約で、伝送ケーブルや通信速度などを定めます。データリンク層は物理層を利用して1対の機器がデータを送受信する方法を規定します。
       ネットワーク層は、複数の機器(ルーター)がお互いにデータ交換を行う方法を定めます。トランスポート層は伝送に送る誤り制御や、伝送が中断した場合の対応方法などを既定します。ここまでを下位層と呼ぶことがあります。TCP/IP はこの二つの層のプロトコルです。
       セッション層は接続の流れを既定する部分で、対話の方法を規定します。プレゼンテーション層はデータの表現方法を定め、アプケーションが実際のネットワークのサービスを行います。TCP/IPではこの3種を区別しません。
      層番号 OSI 意味 TCP/IP
      7 アプリケーション 利用するソフトの規約 WWW、メール、FTP,
      6 プレゼンテーション データの表現方法を定める
      5 セッション ネットワークでの対話の方法を定める
      4 トランスポート 誤り制御や切断時の対処を行う TCP、ポート番号
      3 ネットワーク 複数の機器間の接続 IP、IP番号
      2 データリンク 1対の機器間の接続の規約 CSMA/CD、MACアドレス
      1 物理 実際の伝送路の規約 イーサネット、イーサケーブル
      テキスト 281参照

    2. 物理層

       物理層は実際(電気的に)にデータを伝送する媒体とその方式に関する規約です。物理的な媒体としては、撚り線(ツイストペア線)、同軸ケーブル(TVなどの高周波の用いられます)、光ケーブル、電波や赤外線、などが利用されます。接続形式としては、複数の機器が1本の信号を共有するバス結線や、一つのサーバーに複数の機器が接続するスター結線、それらを階層的に接続する方式、がよく利用されます。
       伝送路の能力は秒当たりの伝送可能なビット数:bps(bits per second)で示されます。

    3. (有線)LAN

       LAN機能をもつデバイスはPCのマザーボードに標準で組こまれています。インターネットを構成するLAN(Local Area Network)には、撚り線とハブが用いられます。この伝送路をイーサネット(ether net)と呼びます。イーサ(エーテル)は光を運ぶ媒体として考えられた仮想的な存在です。ハブはもともと、中心とか中継器の意味があります。
       LAN は基本的には1本の通信路を複数の機器で共有しますから、一度には1対の機器しか接続できません。現在標準的な 100MbaseTX のLANの伝送速度は 100Mbps です。これは、他の機器に邪魔されることなく占有して利用できる場合の速度で、実際の伝送速度は 20〜30Mbps だといわれます。文字数に換算すると 秒あたり数M(メガ)文字を送ることができる速度です。現在、物理的には最大1000Mbps(ギガビット)の能力があります。

         画像は http://buffalo.jp より

    4. 無線LAN

       最近では、電波を利用した無線LANがよく利用されます。無線の利用は利用が法律で定められており、利用可能な電波帯が規制されています。現在、無線LANには 11a、11b、11g 、11nの4種が利用されています。11aは 5.2 GHzの計8チャンネルが利用可能になりました。無線LANの到達距離は 300m、通信速度は 20Mbps です。11b,gの伝送速度は54Mbps、1nでは複数キャリアを利用すると300Mbpsまで利用できます。
       また、無線LAN とは異なる方式ですが、携帯電話によるインターネット接続も可能で、メール機能やwwwの閲覧が可能になっています。無線LANはPCの無線LANカードとアクセスポイントの間を無線で接続し、アクセスポイントとハブを有線で接続します。
         画像は http://www.airstation.com/ より

  4. 下位層のプロトコル


    1. データリンク層

      • フレームとMACアドレス
         イーサネットでは、1本の伝送路を複数の機器で共同利用します。特定の機器が伝送路を長時間占有しないよう、長いデータはフレームとよばれる単位に分割します。各フレーム(パケットとも呼ばれます)には宛先と送信者の機器を番号で指定します。この番号はMAC(Media Access Control)アドレスと呼ばれ、製造企業の番号3バイトと企業内で製品ごとに付ける番号3バイトの計6バイトで指定します。番号は、16進文字で次のように表記されます。
              例:00-01-80-63-58-FF
        先頭の 00-01-80 が製造企業の番号になります。
        テキスト 285

      • CSMA/CD 方式
        伝送媒体にイーサネットを利用すると、複数の機器で線路を共用するため、別の機器が使用中には伝送を開始しない機能が組み込まれています。それでも、タイミングによっては、複数の機器が同時に伝送を開始する(衝突といいます)危険性があります。
         衝突が起こった場合、双方が一旦送信を停止し、やりなおす方法が定められています。この方式を(CSMA/CD:Carrier sence Multiple Access / Collision Detection )といいます。まず、Carrier:キャリアは伝 送路を利用すると出力される信号で、これを検知(Sence)すると新たなデータ伝送をおこなうことは禁止されます。このルールだけでは、衝突の可能性が残るので、衝突(Collisiom)を検出(detection)する機能を併用しながら、データ伝送を行います。

    2. ネットワーク層

      • IPプロトコル
         データリンク層は同じLANに接続する2台の機器間のデータ伝送を行います。ネットワーク層では、異なるLANに接続された機器間でのデータ送信を扱います。異なるLANの機器にデータを送るには、送る経路を定める必要があります。この「経路制御」は通常「ルータ」と呼ばれる機器を使用します。インターネットではこの経路制御を行うプロトコルを「IPプロトコル」と呼びます。
         
      • IP番号
         データリンク層ではデータの宛先にMACアドレスを利用しますが、IPプロトコルでは、IPアドレスを利用します。各ネットワーク機器は物理アドレスとして固定のMACアドレスと、接続されるネットワークで定まるIP番号を持ちます。IP番号は、ネットワーク接続時に定まるアドレスで、次のようにネットワークアドレスとホストアドレスから構成されます。
                IP番号=(ネットワークアドレス,ホストアドレス)
         同じLANに接続する機器のネットワークアドレスはすべて同じで、ホストアドレスのみ異なります。このように、同じLANに接続するネットワークアドレスを同一にすることにより、経路制御が簡単になります。経路制御は、ネットワークアドレスのみを見てデータを配送すればよく、ネット内アドレスは無視することができます。IPアドレスは合計4バイトで、各バイトを10進数で表記します。また、ネットワークアドレスのビット数を、IPアドレスの後に / に続けて指定します。
                192.168.1.2/24
        この例で、192.168.1 (これで合計24ビット)がネットワークアドレス、2 がネット内アドレスになります。ルータは経路制御表(ルーティングテーブル)を用いて、ネットワークアドレスに対応するルータにデータグラムを送ります。
         テキスト 287

      • DHCP
         ネットワークにTCP/IPで接続するには、IPアドレスを設定する必要があります。IPアドレスは多くの場合、DHCP(Dynamic Host Configration Protocol)によってDHCPサーバーから自動的に取得します。DHCPサーバーが稼動していないLANでは、人手で設定する必要があります。


      • ARP
         IP を利用して、ルータからLANに届いたデータは、該当するIPを有するデバイス(NIC)のMACアドレスに届けられます。特定の IP を有する機器の MACアドレスを取得するには ARP(Address Resolution Protocol)プロトコルを利用します。

      • 演習
         MAC と IP の二つのアドレスを使用する理由を考えてください。

        テキスト 302

    3. LAN間接続

      1つのLANに接続できる機器の数は限定されます。複数の LAN の間をルータを利用して接続することができます。ここで、ネットワーク層が利用されます。
       テキスト 289

    4. インターネット接続方式

       世界のサーバーと接続するには ザ・インターネット が利用されます(インターネットは一般的な名称で、特定のネットワーク名ではありませんが、インターネットはザ・インターネットの代名詞になっています)。ザ・インターネットに接続するには接続業者(ISP)との接続が必要です。ISPとの接続には 光ケーブル、CATV、電話線(ADSL)、が利用されます。
       ADSLは通常の電話線を利用しますが、音声より高い周波数を利用しますから、音声電話と共用できます。電話局との距離、上りと下りで通信速度は異なります。

  5. Windowsのネットワーク


    1. プリンタとファイルの共有

       WINDOWS独自の機能で、ファイルやプリンタの共有ができます。このためには、コントロールパネル>ネットワーク接続>ローカルエリア接続を出し、このプロパティで「ファイルとプリンタ共有」をチェックしておく必要があります。ファイルの共有はフォルダのプロパティから設定します。この機能は ウインドウズ 独自に機能で一般的なネットワーク機能ではありません。

    2. IPの設定

       LANの設定は、コントロールパネルの「ネットワーク接続」、で「ローカルエリア接続」の「プロパティ」で、「インタフェースプロトコル」(TCP/IP)を選択します。ネットにDHCPサーバーが存在する場合「IPアドレスを自動的に取得する」をチェックします。

    3. IPCONFIG

      ネットワークの設定はコマンドプロンプトウインドウ(アクセサリの中にある)で以下のコマンド(ipconfig /all)で確認できます。Physical Address はMACアドレスの意味です。このネットではDHCPが有効で、IPは 192.168.11.13 が割り当てられています。
      E:\Documents and Settings\mito>ipconfig /all
      Windows IP Configuration
      
      Ethernet adapter ローカル エリア接続:
              Connection-specific DNS Suffix  . : aitai.ne.jp
              Description . . . . . . . . . . . : SiS 900-Based PCI Fast Ethernet Adapter
              Physical Address. . . . . . . . . : 00-01-80-63-58-FF
              Dhcp Enabled. . . . . . . . . . . : Yes
              IP Address. . . . . . . . . . . . : 192.168.11.13
              Subnet Mask . . . . . . . . . . . : 255.255.255.0
              Default Gateway . . . . . . . . . : 192.168.11.1
              DHCP Server . . . . . . . . . . . : 192.168.11.1
              DNS Servers . . . . . . . . . . . : 192.168.11.1
              Lease Obtained. . . . . . . . . . : 2008年12月18日 22:15:26

    4. ping

      ping コマンドは接続相手が活きているか、接続の応答時間などを知ることができます。URLやIP番号を指定します。ping コマンドを受けた相手は応答を返します。
      E:\Documents and Settings\mito>ping www.google.com
      Pinging www.l.google.com [66.249.89.147] with 32 bytes of data:
      Reply from 66.249.89.147: bytes=32 time=15ms TTL=244
      Reply from 66.249.89.147: bytes=32 time=16ms TTL=244
      
      Ping statistics for 66.249.89.147:
          Packets: Sent = 4, Received = 4, Lost = 0 (0% loss),

    5. tracertコマンド

       tracertコマンドは目的のサーバーに達するまでの経過を表示します。
      E:\Documents and Settings\mito>tracert google.com
      
      Tracing route to google.com [72.14.205.100]
      over a maximum of 30 hops:
      
        1    <1 ms    <1 ms    <1 ms  air.setup [192.168.11.1]
        2     8 ms     8 ms     7 ms  10.18.192.1
        3     8 ms    11 ms     8 ms  noname.aitai.ne.jp [211.1.192.250]
        4    12 ms     8 ms    12 ms  noname.aitai.ne.jp [211.1.195.145]
        5    25 ms    12 ms    10 ms  210.158.147.77
        6     9 ms    11 ms    10 ms  210.158.147.23
        7    24 ms    18 ms    14 ms  AS15169.ix.jpix.ad.jp [210.171.224.96]
      
       14   177 ms   178 ms   179 ms  66.249.94.90
       15   178 ms   178 ms   184 ms  72.14.232.62
       16   180 ms   178 ms   178 ms  qb-in-f100.google.com [72.14.205.100]

    6. まとめ

      LANを利用して、複数のコンピュータでファイルやプリンタの共有が出来る。
      MACは物理レベルで固定、IPは論理レベルのネットワーク上のアドレスでで接続するとき定める。
      ネットワークの機能は、OSIの参照レベル整理すると理解しやすい。
      ping コマンドで通信相手の存在を確認できる。

    7. 課題アンケート

       
      1. 演習、課題

        1.携帯電話機の利用で、音声通話に比べてメールが割安な理由を考えてください。
        (解答例)音声通信の場合、特定の通信チャンネルを独占的に使用するが、メールの場合、パケットに分解して送るため、複数のチャンネルを共用できる。

        2.MAC と IP の二つのアドレスを使用する理由を考えてください。
        (解答例) IPアドレスは住所のように、ネットワーク間でパケットを届けるときに便利な宛先である。IPを利用して宛先のネットワーク(LAN)に届けられたパケットは、(ARPプロトコルで)IPからMAC変換され、対応するMACアドレスの機器に届けられる。MACアドレスは製造時に付加される物理的アドレスで、MACアドレスだけでは全世界のネットワーク間でパケットを交換するのは効率が悪い。

        3.ネットワーク接続しているPCのMACアドレス、IPアドレス、DNSサーバーアドレスはコマンドプロンプトウインドウで
          >ipconfig /all
        で調べることができます。使用しているPCのMACアドレス、IPアドレス、を調べ報告しなさい。また、他のPCのIPアドレスに以下のコマンドを送ると、相手が生きていると応答があります。
         >ping <ipアドレス>
        どのような応答か調べ、報告してください。

      2. アンケート

        1.現在のネットワークの基礎となる実験が行われたのはいつか
         1:10年前 2:20年前 3:30年前 4:40年前 5:50年前

        2.MACアドレスとIPアドレスの説明で不適切なものはどれか
         1:MACアドレスは接続をするとき変化することがある 
         2:IPはLAN間を接続をするときの宛先のアドレスである
         3:IPは4バイトである   
         4:MACは6バイトである  
         3:IPアドレスはDHCPで定まる

        3.DHCPの説明として適当なものはどれか
         1:他のPCと接続するのに必要な機能
         2:MACアドレスを取得するのに必要な機能
         3:IPアドレスを取得するのに必要な機能
         4:ホームページのアドレスを取得するのに必要な機能