コンピュータの歴史 

  1. 最近のPC(パソコン)の構造を見よう

    1. 歴史の前に

       歴史の前に、現在の標準型の個人向けパソコンの構成を見ておきましょう。

    2. 最近のPC

      まず、最近のPC(Personal Computer)の構成をみましょう。PCもデスクトップ型とノート型に分類されます。デスクトップ型(机の上の置ける程度のサイズ)は計算機能が組み込まれた箱(筐体、ケース)と、ディスプレイ、キーボード・マウス、の3点セットで構成されています。ノート型は可搬性を重視し、プリンタ以外は一体構造になっています。

    3. ディスプレイ

       文字や画像を表示します。多くは液晶を利用した表示を行います。よく利用されるディスプレイは19〜22インチ(画面対角線の長さ)で、画素数 1280*1024 程度です。携帯型では8インチ以下の小型のものから、16インチ程度です。

      画像は www.e-trend.co.jp より

    4. キーボード・マウス

       キーボードは文字入力、マウスは画面上の位置を指定するのに利用します。最近は、USBや無線で接続されるものが増えてきました。


    5. 本体:マザーボード(電子基板)

       本体の中心はマザーボードで、プロセッサ(右中央:黒)、メモリ(右下:赤:黄)、フロッピーディスクコネクタ(右下:赤・黒(短))、キーボード、マウス、音声、ネットワークのコネクタ(右上)などが装備されます。グラフィックコントローラ(中央:青)、PCIコネクタ(白)、はオプションの電子基板を挿入します。左下(オレンジ)はシリアル接続のディスクドライブ用のコネクタです。
      プロセッサのクロック(動作速度)は 1〜4GHz、メモリの容量は1000MB 程度でしょうか。
      図は www.gigabyte.co.jp より

      下はメモリカードです。上の右下の赤、黄色のソケットに差し込みます。

       マザーボードにメモリとプロセッサをつけケースに固定します。ケースの電源ケーブルとマザーボードをコネクタで接続し、外付けのディスクやケースのスイッチなどをマザーボードとケーブルで接続すれば、本体部分は出来上がりです。
       
    6. ケースとコネクタ

       ケースにハードディスクとDVDなどのドライブを組み込み、マザーボードとケーブルで接続します。ディスプレイとキーボード、マウスを接続すれば、PCが出来上がります。インターネットに接続するには、プロバイダに接続する機器(モデム)とPCをLAN用ケーブルで接続します。

    7. コンピュータの組み立て

       ケース、マザーボード、プロセッサ、メモリ、ハードディスク、DVDドライブ、キーボード&マウス、ディスプレイ、は部品として販売されています。これらを個別に購入し、組み立てることが出来ます。
       OS と装置のドライバをインストールすれば自分仕様のパソコンが出来ます。自作パソコンの強みは、故障の場合の修理が容易なことです。

  2. コンピュータのハードの歴史

    1. 機械式計算機

       紀元前に、バビロニアで石の移動で計算を行っていたようで、これが、中国経由で日本に渡り「そろばん」の原点になっています。1673年にはライプニッツが乗除算可能な歯車式計算機を製作し、これは、電子式卓上計算機が普及するまで使用された卓上計算機の原型になりました。
       多項式を計算するより高度な計算機はバベジによって1873年に設計された「階差エンジン」といわれますが、1853年にシュウツ(スエーデン)により実用化されました。
       実用機は、1890年のホレリス(アメリカ)が国勢調査に開発したパンチカードシステムともいわれます。これは、後にIBM(企業名)に発展しています。


       画像は http://www.wizforest.com/OldGood/engine/ より

    2. ノイマン方式のコンピュータ

       1919年にエレックスとジョルダンがフリップ・フロップ(電子回路)を発明し、1932年ウイリアムが真空管の一種の「サイラトロン」により2進カウンタを発明したこと、などがディジタル回路の始まりといわれています。1942年のアナタソフはベリーとともにディジタル計算機を開発し、ABCマシンと呼ばれました。これは、連立方程式を解くことが目標で、プログラム可変型ではありません。
       1943年にIBMはMark-I を開発しましたがリレーを多用したため、電子式には分類されません。1946年にペンシルバニア大学でモークリとエッカートは真空管を1800本利用した電子計算機ENIACを開発しました。これは、弾道計算を行うのが目的でプログラム可変方式ではありません。ENIACは「最初の電子計算機」とも呼ばれますが、ABCやドイツで秘密に開発された暗号解読用コンピュータもあり、異論もあるようです。
       1949年にケンブリッジ大学のウイルクスはプログラム可変型の「EDSAC」を開発しました。1952年に汎用性を高めたEDVACが開発されています。この計画の後半に、数学者「ノイマン」が、報告書の中でプログラム内臓方式の計算機を紹介し、最初の論文とされています。プログラム内臓方式の計算機は「ノイマン型」と呼ばれますが、EDVACの中心的な開発者はモークリとエッカートであり、「ノイマン型」の呼称には問題があるといわれています。


      画像ENIAC histoire.info.online.fr より

    3. 日本のコンピュータ

       機械式では、「そろばん」教育が行われてきました。また、逸見(へんみ)氏が改良したヘンミ式の計算尺は広く世界で愛用されました。これは、対数目盛りを利用することで、3桁の乗除算が簡単な操作で計算できました。

        画像は http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/infoserv/museum/si/p21-3.html より

       機械式卓上計算機では大木虎治朗氏が1923年に開発したタイガー式計算機がよく知られています。電子計算機は1964年シャープが世界初のトランジスタ電卓を発表しています。また、1971年インテルが開発した世界初のμプロセッサ i4004 は嶋正利氏の貢献が大きいといわれます。
       i4004
      画像は http://journal.mycom.co.jp/news/2001/11/15/25.html より引用

    4. 大型コンピュータからパソコンへ

       計算機の黎明期はコンピュータは巨大かつ高価格でした。本格的なコンピュータは IBM が1964年に発表した 360 シリーズに始まるといわれています。大学でも1965年から拠点大学に設置された大型機に郵便小包でプログラムを送る方式のため、月数回しか実行できない状態でした。
       しかし、計算機の価格は劇的に低下し、当初数億のコンピュータと同程度のコンピュータの能力を、今では数万円程度の個人向け(パーソナル)コンピュータ(PC)が利用できるようになっています。日本での本格的PCの草分けは 1976年NECが発売した ボードコンピュータ:TK80 といわれています。これは16進キーとLED表示でIntel社の8080機械語プログラムをを実行できました。
       一般向けの8bitPCとしては Sharp が1978年に発売したMZ-80K 、NECが1979に発売したPC-8001 をあげることができます。どちらも、機械語でなく Basic 言語が組み込まれていました。1982年 NEC は16bitPCであるPC9801シリーズを発表し、OSとしては MS-DOS(マイクロソフト開発) を採用した。
       1991年、32bitCPUとWIndows3.0を搭載した PC/AT 互換機が現れ、これは、世界で大きなシェアを獲得していくことになった。

    5. 集積化

       小型低価格のPCを可能にしたのは、電子部品の集積技術です。集積は主にトランジスタの個数で表現します。1年に倍になるという「ムーアの法則」はまだ活きています。
       
      1971 1972 1978 1982 1985 2001 2003
      モデル番号 4004 8008 8086 80286 386 Pentium4 Banias
      トランジスタ個数 2300 3500 29k 134k 275k 42M 130M
      動作クロック 200K 10M 12M 33M 2G 4G

       
         Pentium4                 Core2Quad

  3. コンピュータのソフトの歴史

    1. バッチ処理とOS

       当初、高価格の計算機を効率よく運用するための管理ソフトとしてOS(Operating System)が開発されました。利用者は近くのパンチカードシステムで1枚のカードに1行のプログラムを入力し、そのカードを計算機センターに届けます。OSはカードを読み込み、順次読み込み、実行して結果を印刷します。印刷結果を眺め、修正して再び計算依頼をする、のが当初の流れでした。このような処理を一括(バッチ)処理といいます。

    2. バッチ処理からTSSへ

       計算能力に余裕ができると、バッチ処理と並行して大型計算機に直結した端末から直接プログラムを入力し、実行するTSS方式での利用が可能になりました。この場合、計算機は複数の端末からの要求を、時分割で並列に実行するシステム(Time Sharing System)である必要があります。

    3. CUIからGUIへ

       計算機と人との対話も文字(Character User Interface)だけでなく、ボタンやメニューなどの入力、図形や絵による出力(Graphic User Inreface)など、が実用化されました。GUI の先駆的な研究は、1969からのゼロックスのパロアルト研究所の研究が端緒といわれています。ここで開発された「マウスとwindow」方式が、現在のPCの雛形になっています。

  4. 周辺装置の歴史

    1. 入出力装置

       初期の計算機では、穴を空けたテープやカードが入力装置としてよく利用されました。その後、小型の専用端末でキーボード入力し、結果をフロッピーディスクに出力し大型計算機に渡す方式がよく利用されるようになりました。下図黄色いカードがIBM型パンチカード、カードの上の斜めの帯がパンチされた紙テープです。



       出力装置は 1000行/分の大型の高速印刷機が開発されました。不要な部分まで印刷するため資源の無駄が多く、計算機の小型化/個人化が進むと共に、高速印刷機の需要は低下し、ディスプレイと小型プリンタが主要な出力装置になりました。

    2. 補助記憶装置

       計算機がプログラムを実行するとき、プログラムやデータを記録する装置(デバイス)が主記憶で、ICで構成されています。大量の計算データや実行前のプログラムを記録するには、磁気(ハード)ディスクがよく利用されます。主記憶は電源を切ると記憶を失いますが、磁気記憶は記憶を保持できます。
       単位面積あたりの磁気記録の記憶容量の増加も著しく、5年で1桁の成長を続けています。記録密度は平方インチあたりのビット数で表しますが 1Gバイト を超えており、1ドライブでは1000Gバイトに達しています。

       画像は ascii24.com より

  5. タブレットマシン

    1. タブレットマシン

       ここでのタブレットマシンは、タッチ位置を検出する機能を組み込んだ7インチ以上のディスプレイとネットワーク機能を有する小型のコンピュータを意味する。メール、web機能、メディア(画像、音声)、書籍表示、文字編集などが可能である。
      具体的には、アップル社の iPad が草分け的な存在で、Google社のOSを搭載した Android 端末、なども利用者が増加している。
       

       iPadの場合、プロセッサはクロック1GHzのA5、メモリは16G-64GB(フラッシュメモリ)、画素数1024*768、Wi-FI(無線LAN通信)、Bluetooth、カメラ、各種センサー(加速度、ジャイロ、光、コンパス)、オーディオ録音・再生(AAC.MP3)、動画録画・再生(mp4,mov)、が標準装備され、機種により携帯電話、GPS、機能も内蔵する。アップル社のコンピュータを利用して、アプリの作成環境も提供され、同社のサイトを通して無料、有料のアプリをダウンロードして機能を拡張できる。
       タブレット機能を活用した新しいGUIの操作が組み込まれている。標準的に利用できない機能として、汎用のUSB機能(USBメモリなど)、webにおける Flash 動画、Wifi を利用したサーバー(テザリング機能)などがある。
       Android はGoogle社が提供する Android OS を利用した端末で、最近利用者が増えている。iPad がハード、ソフトともにアップル社のなかで閉じた環境なのに対し、Android は制約が少ない開発環境になっている。

    2. Androidのアプリ開発環境

       Android アプリの言語は Java が基本で、これにSDK(Software Development Kit)をダウンロードする。開発環境としては、Eclipseが利用可能で、他に、JavaScript(html、css)やFlashのアプリを Android に変換するツールを提供されている。
       比較的簡単なプログラムで、GUI、電話、無線、センサー、メディア、を利用したアプリを作成できる。反面、セキュリティ上の脆弱さを指摘する声もある。

    1. 付録

      3桁ごとに、記号をつけてスケールを指定します。例えば、n秒(ナノ秒) は10-9 秒 を意味します。

      記号 T G M  K μ n p
      読み テラ ギガ メガ キロ     ミリ マイクロ ナノ ピコ
      スケール 12 9  3 0 -3 -6 -9 -12

  6. まとめ、デモ

    現在のパソコンの構成
    最初の計算機(非プログラム):バベジ
    最初のプログラム方式コンピュータ:EDSAC
    ノイマンの果たした役割
    デモ:マザーボード、タブレットマシン

  7. 演習・小テスト

    1. 演習、課題

      テキストを参考にコンピュータの歴史年表(15項目以上)を作成してください

    2. アンケート

      出席カードにマークしてください。

      パソコンのディスプレイでよく利用される水平方向の画素数は
       1:320 2:640 3:1200 4:2400

      マザーボードに搭載されないデバイスは
       1:ICメモリ 2:ハードディスク 3:CPU 4:グラフィック制御カード

      ノイマンは
       1:計算機設計の論文を書いた 2:計算機を設計・製作した 3:計算機メーカの技術者 4:最初の計算機の名前

      現在のウインドウ型GUIの基礎を築いた研究所は
       1:マイクロソフト、 2:IBM、 3:パロアルト、 4:MIT、 5:アップル、

    3. レポート課題

      好みによりゲーム機、OS、ハードウエア(電子回路)などを追加した歴史年表(30項目以上)を作成し、
       次回の 講義の前に教壇に提出してください。講義開始後は受け取りません。

    4. 構成を知る:ヒント

       コンピュータの構成を調べるには、「マイコンピュータ」を右クリックし、プロパティ画面で調べることができます。「全般」で 使用OS、CPU、メモリ、が表示されます。「ハードウエア」の「デバイスマネジャー」から接続しているデバイス(装置)を見ることが出来ます。
       もう少し詳細な情報は、「コントロールパネル」の「管理ツール」から「コンピュータの管理」をクリックし、「システム情報」や「ディスクの管理」から見ることができます。(ただし、Window2k,XP)