逆理
数列に関するパラドックスに「ウサギと亀」の問題があります。
ウサギは亀の倍の速度で走ることができますが、ウサギが亀に追いつく間に亀は半分の距離を走ります。
したがって、「ウサギは亀に限りなく近づくことはできますが、追い抜くことはできない」が主張です。どこがおかしいのでしょうか?

数列とその和

1〜n の和
1からnまでの和は、ちょっと工夫すると、簡単に計算できます。逆向きに展開した二つの数列を加えます。
Sn = 1 +  2 +  3        + (n-1) + n
Sn = n + (n-1)+(n-2)+   +    2  + 1
各項の和はすべて(n+1)になりますから、Snを次のように求めることができます。
 2Sn = (n+1)*n

問題点
主張の問題点は「時間」にあります。最初に亀のいた位置(p)に追いつくまでの時間を t とします。この間に亀はp1まで移動します。亀はウサギの半分の速度ですから、ウサギがp1まで移動する時間は、t/2 となります。これをn回繰り返すと、
ウサギが亀に追いつくまでの時間の総和Tは
 T=t(1 + 1/2 + 1/4 + 1/8 + ... 1/(2n))
となります。これは r=1/2 の等比級数の和になります。nが十分大きいと(1/2)n=0ですから
 T=t( rn+1-1)/(r-1)=2t
となります。2tはウサギが亀に追いつく時間で、これ以上時間は経過しないのです。

等差数列の和
隣り合う数の差が等しい数列を等差数列といいます。等差数列は一般に、a * n +b と表現できます。一般の等差数列の和も同じように計算できます。

図式解法
r = 1/2 の等比級数の和については、次のような図式解があります。

等比数列
隣り合う数の比が等しい数列を等比数列といいます。一般項は arn となります。等比数列の和も面白い解法があります。等比数列Rnに対し、r倍した数列rRnを考え、rRn - Rn を求めると、中間の項が消去されます。

Rn = 1+ r + r2 +    + rn
rRn = r + r2 +    + rn + rn+1

rRn-Rn = rn+1-1
これより、
Rn = ( rn+1-1)/(r-1)

r = 2 の場合
r=2 の場合、等比級数の和はつぎのようになります。小さなnで確認してみてください。
1+ 2 + 22 +    + 2n= 2n+1-1