スイッチ回路入門

  1. スイッチ素子とは


     機械式スイッチは機械的な動作で端子間をオン(導通)またはオフ(非導通)に切り替ることができます。スイッチはディジタル回路の基本となる部品で、現在の計算機は百万から億の個数の高速な半導体スイッチを集積した回路で構成されています。

    下の左図は機械式スイッチの記号です。右側が実際のスイッチです。このスイッチはトグルスイッチで、スイッチを上下に倒すと中央の接点と上下のどちらかの接点が接続します。写真の中央の端子が記号の左側の端子になり、上側の端子が記号の右上の端子になります。
     左図のように切り替えが上側のときスイッチはオン、下側のときオフであるとよびます。実際のスイッチではレバーが下の時、上側の接点がオンになります。
     スイッチのオン・オフを示す矢印は、現在のスイッチの状態(オンかオフか)を示すもので、実際の回路の接続とは無関係です。次に紹介しますが、スイッチを直列または並列に接続することで、論理和・論理積の「計算」ができます。

             

  2. スイッチ回路

    1. 直列接続でAND演算ができる

      図のように、二つのスイッチを「直列」に接続し、電池と電球に接続します。すると、二つのスイッチが共にオンのときだけ、電球が点灯します。一方のスイッチがオフになると、ランプは消えます。このような接続をAND接続といいます。ランプのオン/オフで、「AND演算」をしていることがわかります。

      直列接続


      電池と電球
      下側左の2本棒の記号は電池、右の螺旋記号はランプ(電球)です。回路から見れば、スイッチは入力装置、ランプは出力装置になります。

      AND演算
      ランプを変数L、スイッチ A,B を変数 A,B として、
        L = A・B
      と表現できます。L,A,Bは0,1の値のみをとり、 ・ をAND演算と呼びます。
      A,B は 1 のときON、0のときOFFをあらわします。Lは 1 のとき、点灯、0のとき消灯状態を示します。0,1を整数と考えれば「かけ算」と同じです。

      家庭の電気系統
      一般家庭で利用される電力線は、まず、全体のブレーカーを通り、台所や居間のブレーカに接続され、そこから、各電気機器に接続されます。ブレーカと各機器のスイッチはAND接続ですね。
      ブレーカは一定以上の電流が流れると、自動的に遮断するスイッチです。

    2. 並列接続でOR演算ができる

      スイッチのオン側の端子を並列に接続すると、どちらか一方のスイッチをオンにすると電球が点灯します。これを、OR演算といいます。



      OR演算
      ランプを変数L,スイッチA,Bを変数A,Bとして、
        L = A+B
      と表現します。L,A,Bは0,1の値をとり、+ をOR演算とも呼びます。OR演算は整数の足し算と少し違います。 1+1 は 2 でなく 1 となります。スイッチの世界に、2の数字はありません。

      電力用コンセントに複数の機器を接続する
      電力用のコンセントに、複数の機器を接続するのはOR接続です。

    3. 直並列接続をする

       下図 は直列と並列接続を組み合わせたスイッチ回路です。スイッチ M がオンで、かつ、S1 または S2 がオンのとき 電球が点灯します。この回路を論理式で表現すれば
       L = M ・(S1 + S2)
      となります。Lが1のとき電球は点灯します。

       直並列


      問題
       L = (A + B + C) ・ (D + E)
      に相当する回路を作成しなさい。

    4. 使用する端子を逆にして否定演算する

       使用するスイッチの接点を反対側にすればスイッチがオフ側のとき点灯する回路が実現できます。次の図はスイッチBの端子としてオフ側の端子に接続を変更しています。この場合、スイッチBがオン状態の時電球は点灯しませんが、スイッチBがオフになると点灯します。

      逆接続を含む回路


      否定演算
      端子を逆に接続している場合、^演算であらわします。
      この例の場合
        L=A・^B
      となります。 

      問題
      次の回路で、ランプが点灯するスイッチの条件を列挙しなさい



  3. 応用回路

    1. 階段スイッチ回路

      次の図は階段の上下に設置し、一つの電球を点滅する回路です。一方のスイッチのみでも電球を点滅できるし、一方のスイッチで点灯し他方のスイッチで消灯することもできます。ただし、他方のスイッチの状態で点灯(または消灯)するスイッチの方向は変化します。たとえば、スイッチS2がオフなら、S1もオフのとき電球は点灯します。

      階段スイッチ


      等価な回路
      この回路は次の回路と等価です。



      参考
      次のURLに、この回路をシミュレーションするアプレット(ホームページで実行できるJavaプログラム)があります。
       http://www.ccad.sccs.chukyo-u.ac.jp/~mito/ss/progfun/switch/index.html

    2. 多数決回路

      下図に少し複雑なAND,OR接続の例を示します。図は次の条件で S 国で法案が成立するとき、点灯するよう設計されています。S国には大統領 P と三人の議員 A,B,C がいる。通常は議員の多数決で法案を決定するが、大統領が拒否権を行使すると決定は無効となります。ただし、全議員が賛成のときは拒否権は行使できないものとします。議員または大統領が賛成のときは、A,B,C,Pのスイッチをオンにする。A,B,C のスイッチは連動スイッチで、各列の同じ名前のスイッチは同時にオンまたはオフするものとします。

      多数決回路


  4. レポート課題

    1. 大広間のスイッチ
      3つの扉を持つ広間がある。この広間のシャンデリアを各扉のスイッチで点滅したい。スイッチ回路を設計しなさい。

    2. nスイッチ回路もできる
      3回路を少し拡張すれば、一般にn個のスイッチで一つのランプを点滅できる回路を設計できます。