タイマー回路

  1. タイマー回路

    1. タイマー回路

      タイマー回路は何らかの外部信号をきっかけに、特定の時間オン状態となる回路です。ここでは、焦電センサーを用いて、赤外線を放射する動物や熱い物体の移動を検知して、指定時間リレー回路をオン状態にする回路を紹介します。この回路は、動く人が以内空間に設置すれば盗難対策に利用することができます。
  2. 使用する部品

    1. タイマー素子

      タイマー素子にはLMC555 を利用します。電源電圧は 1.5Vから12Vまで動作します。電源の電流は、電源電圧で変化しますが、100μA程度です。CNT,TRG,RST は入力端子で、流れる電流はp(ピコ)A程度です(pは10-12を意味します)。出力電流は電源が5Vのとき、L側で8mA、H側で2mAです。電源電圧が低いとき出力電流も小さくなります。
       下図はICを上から見たときのピン番号と端子の名前です。1ピンの方向に切り欠きや丸いマークがあります。

      http://www.interq.or.jp/japan/se-inoue/ckt5_3.htmより

    2. 焦電センサー

       焦電センサーは赤外線の変化を感知する素子です。高感度の焦電センサーでは5m以上離れた動物の移動を堅守ルできます(レンズをつければ、10mくらいまで延長できます)。センサー単体では微弱な信号なので、これを電気的に増幅する必要があります。
       ここでは、増幅回路を内蔵したセンサーモジュール NAPION(松下電工) を利用します。下にモジュールの構造を示します。NAPIONには、遠距離型、微動検出型など4種のタイプがあります。ここでは標準型のAN1111を利用します。

      (松下電工 NAPION カタログより引用)

      NAPIONは3端子から構成されます。GNDはケースに電気的に接続されています(これはノイズ対策です)。VDDに電源(3〜6V)+側を、GNDに電源のー側を接続します。

      (松下電工 NAPION カタログより引用)

      赤外線の変化を検出すると、OUT端子から 0.1mA の電流が流れ出します。静止時の消費電流は200μA程度ですから電池駆動が可能です。
    3. LED(発光ダイオード)

       LEDは、低電圧、低電力で発光するダイオード素子です。ダイオードに電流を流すことで、電気エネルギーを光のエネルギーに変換して発光します。ダイオードは一定値以上の電圧をかけると電流が流れだし、このときの抵抗はほとんど0になります。
       LEDには、赤、緑、青、およびその混合色で発光します。赤や緑のLEDでは1.9V、青色のLEDは3.8V程度の電圧(Vt)が必要です。したがって、1.5Vの電池では発光しません。赤色の場合1.9V以上の電圧をかけると急に電流が流れます。
      下図の回路で、電池の電圧をVb:、赤色発光ダイオードの必要最低電圧をVtとし、抵抗をR、流れる電流をIfとすると、次の関係式になります(オームの法則)。Vb:3.2、If=10mA、Vt=1.9、としますと、R=230Ω になります。このように、LEDを発光させるには、Vt以上の電圧と流れる電流を制限する抵抗が必要になります。

       Vb = Vt + If * R


    4. トランジスタ

       トランジスタは3端子の素子で、下図はここで用いるトランジスタ C1815 の正面図です。左から、E:エミッタ端子、C:コレクタ端子、B:ベース 端子の順です。B端子からE端子に数mAの電流を流すと、C端子からE端子に約百mAの電流を流すことができます。下図の右側はトランジスタの記号で、左がB(ベース)端子、右上がC(コレクタ)端子、右下がE(エミッタ)端子になります。



      一般にディジタルICの出力端子は余り多くの電流を流すことができません(一般に数mAが限度です)。下図はディジタル信号出力をトランジスタのB端子に接続し、トランジスタのスイッチ機能を利用して、複数のLEDを同時に点灯する回路です。トランジスタのB端子がスイッチの制御端子、C-E 間がスイッチとして利用できます。ただし、トランジスタ(半導体)には極性がありますから、2SC1815(NPN型)の場合、C側を + にする必要があります。



      ここでは、トランジスタを二つ利用します。一つは、タイマーICの出力でリレーを動作させるため、他の一つはセンサー素子の出力の極性(+と-)を反転させるためです。
       上図で、トランジスタのB端子が+レベルのとき、スイッチがオンになり トランジスタの C 端子は0V(グランドレベル)になります。つまり、B端子(接続するディジタル出力)が+のとき、出力(トランジスタのC端子)は 0V となります。また、B端子(接続するディジタル出力)が0Vのとき、スイッチはオフになるため出力(トランジスタのC端子)は 5V となります。焦電モジュールは赤外線変化を検出すると電流を出しますから、これを抵抗で受けると+電圧になります。しかし、ここで利用するタイマー素子は入力信号が +から0Vになると、タイマー動作を開始します。この極性の違いをトランジスタで調整します。

    5. リレー

      リレー素子は継電器ともよばれ、弱い信号で大きな電力をオン・オフするのが目的です。 リレー素子は機械的な動作でスイッチをオン・オフするため、電圧、電流特性には優れていますが、耐久性・信頼性のは問題があります。リレー素子はコイルに電流を流し発生する磁気で、スイッチを吸引してオン・オフを行います。コイルの電流を切ると、スイッチのばねでオフ状態に戻ります。リレーを利用すると、家庭用の電力100Vを回路でオン・オフできます。下図はその回路例で、乾電池の電力でコイルの電流を制御し、リレーの接点をオン・オフします。


       http://www2.ocn.ne.jp/~anfowld3/Elecitel2.html より引用

      図で、AC100Vは家庭用電力のコンセントから取り出しますが、100Vは人体にとって危険な電圧になりますから、コンセントの線に素手で触れないよう注意してください(片側の線に触れるだけで感電します。触れた手が濡れていたり怪我をしている場合、体内に電流が流れ運が悪いと心臓停止を引き起こします)。
       ここでは、電池駆動のため、3Vで動作する小型リレー Y14H-1C-3DS(秋月電子通商扱い) を利用します。下図は下側から端子を見た図で、2-5 ピン間にコイルの電流を流します。リレーがオンになると、4-6 端子間が導通します。オフのとき、3-1端子間が導通しています(1-6端子は内部で接続されています)。1,6端子は共通端子ですから common、3ピンはリレーに電流が流れていないと閉じていますからNC:NormalClose、4ピンは電流が流れていないと開いていますから NO:NormalOpen と呼ぶことがあります。

        
          端子側(下側)から見た図           記号

    6. 抵抗、コンデンサ

       抵抗は電圧をかけたとき、流れる電流を制限します。抵抗の値はカラーコードで表示されています。各カラーは次の値となります。赤からは、いわゆる虹の色です。

       黒:0、茶:1、赤:2、橙:3、黄:4、緑:5、青:6、紫:7、灰:8、白:9

      3番目の帯は、抵抗値の桁を指示し、値がnのとき、10nの値となります。 下図(チャ=1),(黒=0),(赤=1),の場合、最初の二つで 10 を意味し、最後は 102 ですから、10*102 となり、1k オームとなります。4番目の帯は、抵抗値の精度で、銀色が10%、金色は5%の誤差です。通常、10%の誤差の抵抗を利用します。


      http://www.jarl.or.jp/Japanese/7_Technical/lib1/teikou.htm より
       
       コンデンサは、電気(電荷)を蓄えることが出来ます。タイマーの定数で利用する電解コンデンサは絶縁体に薄い酸化膜を利用しています。極性があり利用できる電圧に制限があります。数μFから1000μFまで、比較的大容量なコンデンサです。図で、白い帯がある端子がー側です。+側の端子線はー側より長くなっています。
       ICの電源電圧を安定化するため、ICの電源端子に積層セラミックコンデンサを接続すると効果があります。リレーやLEDが同時¥のオンになったとき、電源電圧が変動します。この影響でICが誤動作しないよう、瞬間的に不足した電気を補うのが目的です。小型のコンデンサには、203 のような3桁の数字でコンデンサの容量を表示します。抵抗の場合と同様、最初の2桁が値で3桁目が桁を示します。203の場合、20*103 pF になります。pは10-12 です。F:ファラッドがコンデンサの容量の単位になります。

      電解コンデンサ   積層セラミック

  3. タイマー回路の設計

    1. 回路図と動作

      AN1111(焦電モジュール)に電源を接続し、OUTから出力を取り出します。極性を反転するため、トランジスタでセンサ出力を反転させます。R2はセンサからの出力がないとき、トランジスタQ1のベースを0Vにし、Q1をオフ状態にします。このとき、Q1のC:コレクタはHレベルになります。
       焦電モジュールが検知し電流を流すと、Q1はオンになり、Q1のC:コレクタをHレベルから0Vにします。
      この立下りが、タイマーIC:555のTRG端子に入ると555はタイマー動作を開始し、OUT端子をHレベルにします。同時に コンデンサ:C1と抵抗:R4 の時定数による遅延処理を開始し、時間が経過するとOUT端子を0Vの戻します。OUT端子がHレベルの間LEDが点灯し、トランジスタQ2をオンにしてリレーのコイルに電流を流します。コイルに電流が流れている間、リレーの共通端子(6ピン)とオン接点(4ピン)はオン状態になります。



    2. 製作上の注意

       半導体はすべて電圧の極性を持ちます。VCC側を電池+、GND側を電池-とします。間違えると半導体がダメージを受けます。VCCとGNDの端子はすべて接続する必要があります。
       ICのピン番号は切り欠きを左にしてICを上から見たとき左下の端子が1ピンになります。1ピンと電源の0V側(GND)を接続します。また、左上の端子が8ピンになります。8ピンと電源の+側(VCC)を接続します。
      IC:555 の5ピンは使用しないので、接続する必要はありません。回路を裏返して半田付けで接続する場合、1ピンが左上、8ピンが左下になります。
       トランジスタQ1,Q2,、コンデンサC1、LED:D1、ダイオード:D2 は極性があります。接続する方向を間違えないよう注意してください。コンデンサ、ダイオードには+側 に + の記号がつけてあります。
       リレーの端子番号は、IC(555)と異なり端子がわから見てピン番号をつけています。ICは上側から見て左下を1番としますが、その他の部品は下側から番号を振る場合もありますから注意してください。