回路シミュレータ:CircuitMaker

  1. 回路シミュレータ

    1. アナログ回路
      アナログ回路のシミュレータは Spice が有名です。与えられた回路から、微分方程式を導出し数値計算で回路のシミュレーションを行います。
       しかし、この方式でディジタル回路をシミュレーションすると膨大な計算量になります。

    2. ディジタル回路
       ディジタル回路のシミュレータは、回路の論理機能と遅延情報でディジタル回路のシミュレーションを行います。計算機をそのままシミュレーションすることも可能ですが、詳細な遅延時間の計算や、アナログ混在回路のシミュレーションは苦手です。

    3. ハイブリッド回路
       CircuitMakerはディジタル・アナログ混在回路のシミュレーションが可能です。アナログ回路シミュレータにディジタルシミュレーション機能を付加した方式ですから、ディジタル回路のシミュレーションはディジタル専用シミュレータと比べて使いづらいところはあります。

  2. CircuitMaker

    1. CircuitMaker
       CircuitMakerは、Altium社の製品で、CircuitMaker2000は プリント基板設計機能を含めて 1000ドルで販売されています。ただし、同社は 学生向けに素子数を50に限定した Student 版を 無料で公開しており、自宅での勉強に利用することができます。ここからダウンロード可能です。
       また、講談社の「ブルーバックス」シリーズで、利用法が紹介されています。

    2. 回路図入力:素子選択
       まず、回路図入力を行います。ツールメニューの  をクリックすると、「DEvice Selection Window」が現れ、部品を選択できます。Major、Minor、Device Symbol、Model で絞り込んでいきます。トランジスタ類は日本のモデル番号には対応していません。ディジタル系は、Digital By Number でCMOS40系やTTL74系が選択できます。



      素子を選択したら、「Place」ボタンで配置が可能です。マウスで位置を選択し、クリックして配置します。位置は配線後でも、後から調整可能です。部品選択はDevicesメニューのHotKeyからも可能です。

    3. 電源、信号生成、表示
       通常の部品以外に、電源、グランド、信号生成器、ディジタル入出力部品などが利用できます。電源は 「Analog」の「Power」、から 「V+」や「GND」で選択できます。電圧は、後から変更できます。
       「Analog」>「Instruments」、「SignalGenerator」は、正弦波だけでなく、ディジタル用パルス生成も設定可能です。GND とする信号は必ず設定が必要です。

    4. 配線
       配線を行うには、 ボタンを押します。ポインタを部品の端子に近づけると 赤い + マークが出ます。ここでクリックすると端子に接続できます。他の部品の端子を同様に接続します。配線経路は、水平・垂直線で自動生成されます。後から、調整が可能です。
      下図は、 トランジスタによるTTLへのレベルコンバータ回路です。「Analog」>「Instruments」、「SignalGenerator」 で入力信号を生成します。トランジスタは標準のnpn型とし、抵抗、電源、グランド、NOT素子、を接続します。ディジタル信号の表示用に、DigitalAnimated>Display>LogicDisplay を接続しています。



  3. シミュレーション

    1. SignalGeneratorの設定
       波形表示は 「Tranjient」機能を利用します。標準の入力信号は1Khzでこの場合、デフォルトで表示されます。入力クロックを設定するには、「SignalGenerator」をダブルクリックします。EditSignalWindowで電圧や周波数を設定できます。ここでは、Frequency(周波数)を10Khzとします。
       


      この画面で、Waveをクリックすると、波形も変更できます。

    2. AnalysesSetup
       次に、Simulation メニューのAnalysesSetupで、シミュレーション条件を設定します。解析の開始、終了時刻、計算間隔(StepTime)を設定します(Max Step Time 可変時刻で計算する場合の最大時間だと思います)。ここでは、入力が10Khzですから、1周期が100μ秒となります。Stoptimeはこれの数倍で良いでしょう。StepTimeは1周期の1/10以下とする必要があります。



    3. 表示画面
       (run)ボタンで計算を開始し、表示ウインドウが出ます。(Probe)をクリックし、回路の端子をクリックして、端子の波形を表示します。表示長が適当でない場合、まず、 でMan を押して Manual モードにします。次に、表示ウインドウの  ボタンで、時間軸の拡張・収縮をします。



       1画面に複数の波形を表示するには、 ボタンで上下の間隔を広げます。次に、Shiftキーを押しながら端子を選択すると、波形が複数表示されます。このままでは、電圧が同じ場合重なって表示されますから、波形の名前をクリックし選択し、鍵盤の上下キーをクリックして波形を上下に移動します。

    4. ディジタル回路のステップ実行
      ディジタル回路は、スイッチ操作により逐次実行できます。サンプルとして、次のラッチ回路を組みます。左のスイッチは、Digital>Power>LogicSwitch で配置します。
       シミュレーションモードを  をクリックしてディジタルモードにします。 をクリックすると、信号のレベルにより、信号の色を変化させることができます。この状態で、をクリックすると、ディジタルシミュレーションを開始し、スイッチをクリックして信号の値を変化させることができます。上の信号をクリックしてデータ信号をセットし、下のスイッチをHにすると値を取り込み、Lにしてもその値を保持します。この状態で、上の信号を切り替えとも記憶した値は変化しません。


       この回路は、最初発振状態になるため、ランプが点滅します。一度、下側のクロックを1にすると安定します。

    5. スイッチ回路
      こんな、回路もシミュレーションできます。電池とスイッチとランプの組み合わせ回路です。電気的に接続のない線は緑で表示されます。スイッチは Switches>Toggle>SPDT で、ランプは Display>lncandescent>Lamp で、電池は General>Souces>Battery にあります。図で、s3,s4 と s5,s6 は2回路の一つのスイッチとして、同時にオンオフします。この構成で、どのスイッチでもランプをオン・オフできる回路です。



    6. エミッタ接地トランジスタ回路
       アナルグ回路のシミュレーションを行います。トランジスタはバイポーラのNPN型です。エミッタに負帰還をかけて、安定性を高めています。トランジスタで増幅を行うには、トランジスタが半導通となる程度にベース電流を流します。このときのコレクタの電圧は電源電圧の1/2〜2/3 程度にします。
       この状態で、入力の交流信号が変化すると、コレクタの電圧が変化します。エミッタの抵抗は負帰還として働きます。交流信号にも負帰還が働くと、ゲイン(電圧利得)が確保できませんから、エミッタのコンデンサを付加し、交流分には負帰還が働かないようにします。



      入力は6kHz、2.04〜2.34Vの正弦波です。下は出力コレクタの波形で、 10V中心に0.6Vの振幅です。約2倍の増幅度です。



      下は入力と、コンデンサで直流分をカットした出力を同時に表示した例です。入力信号が下がると、ベース電流が減り出力電圧が上がります。したがって、入力を反転した出力になります。



      高い利得は、1段の増幅では困難で、数段の増幅回路を重ねます。設計は面倒ですから、特殊な増幅でない限り、OPアンプを利用が簡単です。