演算回路の応用

  1. 実際のオペアンプ回路

    1. オペアンプ素子

      オペアンプの素子は低周波の汎用タイプでは1個50円程度から入手できます。高速高精度になると1個500円、高精度なモジュール型になると、数万円のものもあります。下表でTL071,LM358 は汎用(安価)、LM7171 は高速、LMP7171は高精度型です。

      項目 TL071 LM358  LM7171 LMP7711 単位
      電源電圧 ±5〜±18 ±3〜±30 ±5.5〜±36 ±1.8〜±5.5 V
      電源電流 1.4 0.5 8.5 1.15 mA
      入力抵抗 10T   40M   Ω
      利得 100 100 85 100 dB
      利得バンド幅 200 17 MHz
      同相抑圧比 86 85 85 83 dB
      温度変化 18 35 -1 μV/C
      オフセット電流 100pA 75nA 4μA 50pA  
      スルーレート 13   4100 9.5 V/μS
      雑音     7n V

    2. 構造

      DIP型のパッケージは下のように二つのオペアンプが組み込まれています。端子になっています。4ピンと8ピンの電源を接続します。
       

  2. 演算回路の応用

    1. 反転型増幅回路

      左は基本的な反転型増幅回路、右は入力インピーダンスを増すため、変形した回路です。左の回路の増幅度は R2/R1 、入力抵抗は R1 です。入力抵抗を上げるためR1を増やすと、増幅度の確保が困難に成ります。
       右の回路の増幅度は100倍( -( 1 + R3/R4)))で、 、入力抵抗は R1(1M) となります。
        
    2. 非反転増幅回路

       下図は非反転型増幅回路です。増幅度は (1 + R3/R4) 、入力抵抗はOPアンプの入力抵抗になります。

       

    3. 単電源交流増幅

       片側の電源で、交流信号を増幅します。オペアンプの+端子は、電源の半分の電圧を設定し、この電圧が交流の0V電圧になります。

    4. シュミットトリガ付コンパレータ

       信号が負から正に変化する場合と、正から負へ変化する場合の閾値をかえる機能をシュミット(人名)トリガといいます。この回路の不感幅は、(R1/(R1+R2))((+VCC)- (-VCC)) となります。
       入力が E+V/2 を越えると出力は -VCC になり、E-V/2 を下回ると 出力は +VCC になります。


    5. 定電流回路

      センサーによっては一定電流で駆動する必要があります。このような場合、負荷抵抗RLに無関係に入力電圧で定まる電流をRLに流す 電圧-電流 変換回路が利用できます。下図で、RLに流れる電流 IL は

       IL = (Rf / Rs * R1) * vin


      となります。まず、オペアンプの -端子の電圧はオペアンプの出力を vo とすると
       v- = (v0 /(R1 + Rf)) * R1
       となります。一方、Rs の右側の端子電圧を v1 とすると
        v+ = ( Rf /(R2 + Rf ))(vin - v1) + v1
      となります。v+ = v- ですから、
       Rf * vi = R2 * (vo - v1)
      となります。Rs を流れる電流を IL とすると、vo - v1 = Rs * IL ですから、
       IL = ( Rf /(Rs * R1)) * vi 
      となります。RsにくらべてRfが十分大きいとき、IL はRL を流れる電流に等しくなります。
       具体的には、次のような回路になります。

      Rs から Rf に流れる電流を抑えるために、バッファ回路を挿入します。入力電圧は ツエナーダイオードで一定電圧を加えます。ツエナーダイオードの電圧を5V、R1=50k、Rf=10k 、Rs=100 とすると IL=10mA となります。オペアンプの最大出力電圧を12Vとすると、Rsで1V電圧が降下しますから、RLの最大電圧は11Vになります。したがって、RLの最大値は1.1k となります。

    6. 加算、差動回路

      加算回路で、利得は1です。

      差動回路です。オペアンプに良いものをりようすれば、計装アンプとして利用できます。


    7. 整流回路

       単にダイオードで整流すると、入力電圧が 0.6V を超えないと出力電流が流れません。オペアンプの帰還抵抗に組み込むと、定電圧分がオペアンプの大きな増幅度で無視出来るようになります。



      ダイオードの順方向電圧を Vf として、

       Vo=-AVV--Vf
       V-=(ViR2+VoR1)/(R1+R2)

      ですから、
        Vo=-(AvViR2+Vf(R1+R2))/(R1+R2+AVR1)
      となります。Av が充分大きければ、
       Vo=-R2/R1
      となります。
      同様に、負側の整流回路は、下図左の回路を用います。また、正負両側の整流をするには、正・負両側の整流回路の出力を加算思案す(右の回路)。
       

    8. 積分・微分回路

       コンデンサの充電による積分回路は、充電が進むと非線形になります。オペアンプを入れるとこの問題をある程度解消できます(左)。この回路のみでは、出力は +または-に飽和してしまいます。どこかで、リセットする回路が必要です。
       

      R1とC1を入れ替えると、微分回路(右)になります。

    9. ピーク値検出回路


       出力を-入力に接続した回路は、利得1のインピーダンス(入出力抵抗)変換回路となります。これを利用して、最大値までコンデンサを充電します。実際には、コンデンサを放電するリセット回路が必要です。


  3. 電源、オフセット回路


    1. 電池から、両電源を作る

       センサーのよっては、±の両電源が必要な場合もあります。このような場合、単をプラス/マイナスの電源とし、グランドの電位を取り出すと便利です。ただ、抵抗で分圧すると、使用する電流に差があるとグランド電位が変動してしまいます。
      このような場合、opアンプを利用して、0Vを安定化させます。電源を分割した抵抗で、0Vを作り、出力がこの電圧になるよう、出力トランジスタを制御します。


    2. オフセット調整

       出力のDCレベルを調整したい場合があります。オフセット調整端子がついたOPアンプもありますが、そうでない場合、調整回路を付加します。下図の場合、非反転増幅器のフィードバック回路の電流を調整します。180,840Ωは1kΩの抵抗を分割しています。ボリュームで回路の利得も変化しますから、注意してください。



  4. 参考文献


    富田 豊 すぐに使えるオペアンプ回路100 丸善株式会社