基礎実験

  1. 直流回路の要素


    1. 直流回路

       ここでは、抵抗回路を組み立てて、抵抗や電圧(電流)を測定します。測定には 「回路テスター」を利用します。電源には、商用電源を直流に変換する電源回路を利用します。

    2. 電圧、電流

       電気の流れを水の流れにたとえると、電圧は水圧(落差)、電流は水量に相当します。電圧の単位は V:ボルトで 電池の電圧は 1.5V、乗用車のバッテリの電圧は12Vです。小型の情報機器では、3V−6Vくらいの電圧が良く利用されます。実験によく利用されるディジタル回路の電圧は5Vです。
       電流は、物質を構成する「電子の流れ」と解釈されています。電流の単位はA:アンペアです。1Vの電圧を1オームの抵抗に接続すると1Aの電流が流れます。

    3. 抵抗

       下は抵抗と呼ばれる部品です。抵抗に電圧:V を加えると電流:I が流れます。V と I は比例の関係があり、V/I は電流の流れやすさを示す定数になります。この値を抵抗値と呼びます。抵抗値が非常に大きいものは絶縁体、小さいものは導体と呼ばれます。前者は木材や一般のプラスチック、後者には銅やアルミなどの一部の金属です。
      抵抗の値をRΩ、電圧をVボルト、流れる電流をIアンペアとすると、以下の関係があります。
       V = R * I :オームの法則

       

    4. 抵抗の値

      抵抗の値はカラーコードで表示されます。左から、第1,2,コードで値、第3コードで桁を示します。最後の金色は精度です。

      黒:0、茶:1、赤:2、橙:3、黄:4、緑:5、青:6、紫:7、灰:8、白:9
      (黒丸、チャイナ、席次、第三、岸、嬰(みどり)児、せいろく、至難、ハイヤー、白黒)

      たとえば、330オームは 橙、橙、茶、です。

    5. 抵抗の直列と並列接続

       R1とR2の二つの抵抗を直列に接続した場合、全体の抵抗は 
          R1 + R2 
      となります。また、二つの抵抗を並列に接続した場合、合成抵抗の値は
          R1 * R2 /(R1 + R2) 
      となります。並列の場合、一見変な式ですが、二つの抵抗を流れる電流の和が、合成した抵抗の電流と同じになることから計算できます。合成抵抗を R とすると、
       1/R = 1/R1 + 1/R2
      です。これから、R の値が計算できます。

  2. 電源


    1. 直流電源

       電池やバッテリーは電流の流れる方向が変化しない直流(DC)の電源です。一方、発電所から配送される家庭や工場の主電源は電流の流れる方向が変化する交流(AC)電源です。
      ディジタル回路の電源には直流電源を利用します。実験では、交流電源から直流電源に変換する電源装置を利用します。
       直流電源装置は一般家庭用の交流100Vから、直流電力を供給する装置です。「つまみ」を回して電圧を変更できます。電流が流れすぎないよう、最大電流を制限する機能があります。

    2. 取り扱い

      下図 6 のスイッチで電源を入れます。9 のつまみで電圧を設定します。8 のつまみは電圧を微調整できます。1 もメータで電圧を確認できます。7 のつまみは電流制限用で左に回しきると電流が流れなくなります。2 のメータで流れている電流を確認できます。4 の端子が電源のー側(0V とか グランドともいいます)、5 の端子が+側です。ここに、端子コード(形状よりバナナ型といいます)を差込、パッチボードと接続します。


    3. 注意1

       ここで利用する実験用電源装置を利用の電圧は触っても安全ですが、数十V(ボルト)以上の電圧は直接触ると危険です。人の体は電気を通し、人の神経は微弱な電気信号で筋肉の収縮や判断をしています。十ボルト以下でも、電源のプラスとマイナスを直結すると、大きな電流が流れ発熱します。近くに燃えやすいものがあると、火事になる恐れがあります。

    4. 注意2

       必ず、電圧を確認してから、試験回路に接続してください。接続したとき電圧が下がる場合は、過電流となっています。電流が100mA を越える場合、回路側で電源の+ と ー  を直接接続するなど、異常があります。電源の接続を切り、回路を点検してください。

  3. 回路測定器(テスタ)

    1. テスタ

       正確には、電気回路用のテスタ(検査機器)の意味です。電圧、電流、抵抗、導通チェックなどを行います。簡単なものは1000円位で市販されています。アナログ型とディジタル型があり、アナログ方式は針の振れで値を読み取ります。ディジタル型は数値で表示されます。
       

    2. 電圧測定

       テスタの測定用の端子を本体に接続します。黒の線を本体の COM(グランド、マイナス側) に、赤の線を V(電圧) の端子に接続します。測定する電圧が直流の場合、テスタ本体の中央のロータリスイッチを直流電圧(V、DCなど)に回します。交流電圧の場合 AC または 〜V に回します。
      赤、黒の測定用の先の尖った棒を測定したい端子軽く接触させると電圧が表示されます。家庭用の電圧の場合、交流で100Vになります。数十V以上の端子に直接手で触れると感電しますから注意してください。実験で利用する電圧は10V以下ですから、心配要りません。

    3. 抵抗測定

       抵抗は、ロータリスイッチを Ω の位置に回します。これで、測定したいものの両端に2本テスタの棒で触れます。普通の抵抗場合、テスタの線の赤と黒の方向は気にする必要はありません。テスタの両方の棒を両手で握ると、抵抗の数百キロ程度の値が表示されます。これは、手の間の抵抗値になります。高い抵抗の場合、棒の両側に触れると測定値が狂います。
       抵抗測定では、テスタから対象物に電圧をかけ、流れる電流から抵抗値を算出します。ダイオードなど一定以上の電圧をかけないと、電流が流れない素子は抵抗の測定が出来ない場合があります。

    4. 電流測定

       電流測定が可能な場合、赤の線を本体の A や mA の位置に差し替えます。この状態で、電源の両端を直接テスタ棒で触れると大きな電流が流れるためテスタが壊れるか、安全弁が働いて、内部のフューズが切れます。絶対にしてはいけません。抵抗の両端を流れる電流は両端の電圧がわかればオームの法則から計算できます。
  4. ブレッドボード


    1. ブレッドボード

      多くの電子部品の端子間隔は0.1インチ(約3mm)になっています。ブレッドボードは0.1インチ間隔に穴が開いた回路の試作用ボードです。

    2. 電源バーと配線

      上図のように、赤と黒の上下の横の端子の行(電源バーといいます)と青色の中央の縦の穴の列は裏側で接続されています。上下の電源バーは電源を接続します。青色の部分は配線領域です。
      ボードに部品を差込、さらに、単線を差し込んで配線を行うことができます。配線用の線は市販もありますが、単芯のワイヤを利用することができます。 下は、スイッチでLEDを点灯する回路の配線例です。


  5. 実験


    1. 使用する部品

      パッチボード:穴に線を差し込んで配線をする台です。 
       抵抗 :470Ω、330Ω(2本)
       テスター :電圧、抵抗、電流を測定することができます。
      ロータリスイッチをV(DCV)の位置にすると電圧を測定できます。また、Ωの位置にすると抵抗を測定できます。

    2. 実験回路

      実験回路はつぎのような記号を用いて表記します。左上 は電源の+、右下は電源の-(0V,グラウンド)の記号です。は抵抗で下の値は抵抗の値です。
      下の回路図は、抵抗330オーム単独(左)と、330オームと470オームの直列(中央)、、330オームと470オームの並列(右)の接続回路です。


    3. ブレッドボードによる配線

      ブレッドボードは穴に銅線をさしこんで配線する実験用のボードです。ボードの穴の列は裏がわで接続されています。ボード最上段(赤線)と最下段(黒線)にある穴は横方向に裏側で接続されています。この赤線と黒線の穴は電源用に利用します(電源バーといいます)。電源バーには電源を接続します。


      ボードの中央にある上下の縦線(青線の部分)は裏側で接続されています。したがって、同じ縦列の5個の穴に差し込んだ線は、互いに接続されます。上図の右側は、電源に抵抗を並列に接続しています。上側は電源バーで接続しています。抵抗の下側は同じ縦列に接続し電源バーのグランド側に接続されています。
      中央は2本の抵抗を電源に直列に接続しています。



    4. 実験1

      ■テスタを抵抗測定モードにして二つ抵抗の値を測定します。

      ■図のように330オームの抵抗を接続します。

      ■電源のメータで電源電圧を5Vにし、ブレッドボードに接続します。
      テスタを直流電圧モードにして電源の電圧を測定します。
      抵抗と電圧の値から、流れる電流を計算しなさい。

      ■注意:
      テスタを電流計のモードに設定したまま、テスタの針を電源に直結すると、テスタが壊れます

      報告例

      抵抗測定値:328オーム
      電圧測定値:5.18V
      電流計算値:5.18/328*1000=15.8mA

    5. 実験2

      330オーム(公称値)と470オームの抵抗をテスターで測定しなさい。この二つの抵抗を直列に接続した場合と並列に接続した場合の合成抵抗の計算値と測定値を比較しなさい。

      報告
      二つの抵抗の値は327オームと328オームであった
      直列接続した場合の測定値は655オームであった。
      並列接続した場合の測定値は164オームであった。

      直列接続した場合の計算値は 327+328 = 655 オームである
      並列接続した場合の計算値は 327*328 /(327+328) = 107256/655 = 163.7

  6. 課題

     実験1,2, の報告例に倣い、報告書を作成してください。