RC回路の特性

  1. RC回路の性質

    1. コンデンサとは
       コンデンス:condense は「圧縮とか濃縮する」意味で、この場合、電子を濃縮して集める意味です。絶縁体を挟んで2枚の導体を近接して電圧をかけると、2枚の導体の表面に電子が集まります。これは、電子(電荷)を蓄積している状態になります。



       電子の量(電荷:でんか)の単位はクーロンで、1Vの電圧で1クーロンの電荷を集めることができるとき、そのコンデンサの容量は 1F:ファラッド とします。コンデンサの容量は、導体の面積:Sに比例し、導体間の距離:d に反比例することが知られています。

        C = k ・ S / d

      コンデンサに蓄えられる電荷の量は、コンデンサの容量とコンデンサにかける電圧の積に比例します。

       Q = C ・ V
    2. コンデンサの直列・並列接続
       コンデンサC1,C2 を並列に接続すると、C1+C2 の容量のコンデンサと同じになります。直列に接続すると、C1*C2/(C1+c2) の容量のコンデンサと同じになります(直列に接続した場合、双方のコンデンサに流れる電流は同じになります)。
       これは、抵抗の場合と逆の関係になります。

  2. RC回路の特性

    1. RC 回路
       RC回路は、R:抵抗、C:コンデンサ、の部品を含む電気回路の総称です。抵抗を含む回路の電圧、電流の振る舞いは、前に説明しました。ここでは、コンデンサとコイルを含む回路について紹介します。

    2. RC回路
      ここでは、下のようなRC回路の動作を調べます。


       抵抗とコンデンサを直列に接続すると、抵抗を通してコンデンサに電圧がかかり、コンデンサへの充電が開始されます。コンデンサの容量を C とすると、Q=C・V クーロンの電荷が蓄積されると、それ以上の充電はされないため、電流が停止します。
       電源を0Vにすると(電源の両端を短絡する)、今度はコンデンサの電荷が抵抗を通して流れ出す「放電」が起こり、コンデンサの電荷がなくなるまで続きます。この現象を「過渡現象」といい、時間の関数として数学的に解析することが可能です。

    3. 過渡現象
       ます、CircuitMaker によるシミュレータでこの回路の動きを確認してみます。

      R=1Kの場合のコンデンサの電圧の変化を調べます。緑が電源から提供される波形(入力電圧)です。電圧が高いとき充電、低いとき放電が起ります。
       黄色がコンデンサの両端の電圧です。コンデンサの電圧は2周期まで安定せず、波形が上昇しています。これは、電源の「過渡現象」だと思われます。充電中は充電と共にコンデンサの電圧が増加し、放電中は電圧が下がります。



      R=100の場合の変化を次に示します。抵抗の値が小さいため、急速に充電・放電されます。ある程度充電が進むと、コンデンサの両端の電圧が増加するため、充電がしにくくなるため、電圧の変化が緩くなります。
       放電の場合は、放電が急に進むため電荷がなくなるため、やはり電圧の変化が少なくなります。



      この現象の数学的な扱いは、こちらを参照して下さい。

  3. 交流解析

    1. 交流解析
      交流解析は特定の周波数の交流に対する回路の特性を解析します。コンデンサーは直流に対しては充電が完了すると電流は流れなくなります。これに対して、交流の場合逆向きの電界がかかるため、充電と放電を繰り返すため、定常的に電流が流れます。

    2. インピーダンス
       交流の周波数を f とします。ω = 2πf とすると、容量Cのコンデンサの「抵抗」は 1/(ωC) となります。f やCの値が大きくなると、抵抗の値は小さくなります。
       ところが、RとC の直列接続をした回路の抵抗は R + 1/(ωC) とはなりません。

    3. 交流を電源とする場合
       
      R=1K のとき、充電電流は小さいため、コンデンサの電圧(黄色)は電源の電圧(緑)まで上昇できません。電源の電圧がコンデンサの電圧以下になるまで充電が続きますから、コンデンサーの電圧のピークは、電源の電圧のピークに比べて遅れます。なお、最初の2-3周期は、過渡状態になります。交流解析は、4周期以後の定常状態を対象にします。



      R=100 の場合、大きな充電電流が流れるため、コンデンサのピークの電圧は電源のピークの電圧に近くまで上昇します。



    4. 電流を見る
       電圧でなく、電流を見るため回路を変形し、A点の電圧を観察します。A点は抵抗の電圧なので、流れる電流を見ることになります。


      下図で黄色が電流です。電圧が立ち上がる(増大する)と充電が始まり、電圧がピークを迎える前に電流はピークを終えます。電圧が下降を始めると、電流は放電を開始します。



       このように、コンデンサの電流は電圧を「微分」していることがわかります。また、電圧のピークの前に電流のピークがありますから、電流は電圧より「位相が進む」ことになります。

  4. コンデンサの利用

    1. 補助電源
       瞬間的に電力を消費する電子回路があります。このような回路の近くにコンデンサを配置しておくと補助的な電源として利用できます。電源が遠くにあると、配線抵抗や配線のインダクタンスのため急激な電力需要に対応できません。このような場合、近くに配置したコンデンサからの放電を利用することができます。

    2. 直流成分の阻止
      コンデンサは直流をの電流を流しません。電圧が変化すると充放電に伴う電流変化を行います。この性質を利用して、コンデンサを直列に挟むことで、直流成分のみを阻止することができます。

    3. タイミング素子
       コンデンサは充電を行うことで、電圧が上がります。この充電時間をタイミング(時間)を必要とする回路に利用できます。充電時間は、コンデンサ容量Cと充電抵抗をRとすると、RCに比例します。
       タイマー素子や発振回路にこの性質が利用されます。

    4. 周波数選択
      コンデンサはコイルと組み合わせて、周波数選択回路として利用できます。詳細はコイルの項を参照して下さい。