RL回路

  1. RL回路の性質
    1. RL回路
       RL回路は抵抗とコイルから構成される回路です。コイルは磁場を生成することで、モーターやソレノイド(磁石)など電気エネルギーを機械エネルギ変換することができます。

    2. コイルとは
       導体に電流を流すと導体に巻き付くような磁場が生成されます。磁場と磁場の間には反撥・吸収する力が働きます。磁場を発生する物体(永久磁石)もあります。永久磁石と磁場の間にも反撥・吸収する力が働きます。

    3. コイル
       1本の導体が発生する磁場は弱いのですが、導体を同じ方向に巻き揃えますと、磁場が収束し強い磁場を発生することができます。導体を同じ方向に巻き揃えたものがコイル:coil です。coil は「ぐるぐる巻く」意味があります。
       コイルの電気的強さは磁場の強さ:インダクタンス で計測され単位はヘンリーです。

    4. コイルの電気的性質
       コイルの電流は空間の磁場を伴います。磁場は電流に伴い成長しますから、インダクタンスの強いコイルに電圧をかけてもすぐには電流が流れません。抵抗を R 通して電圧 V をかけると R/V の電流まで立ち上がり、その後定常状態を続けます。磁場を作成・維持するにはエネルギーが必要で、このエネルギーは電力から供給されます。
       コイルの特徴(注意点)は回路を切断したり、流す電流を弱めた場合です。コイルは空間に磁場を作成しています。電源を切断したり、電流を弱めても、磁場の値が小さくならないと電流は弱くなれないのです。このため、磁場を作成している電流を止めようとすると、磁場からエネルギーが戻され電流を流し続ける起電力が生成されます。

  2. RL回路の解析

    1. RL回路の過渡現象
      抵抗を通してコンデンサにパルス(5Vと0Vを繰り返す)を加えます。



      下図はCircuitMakerによるシミュレーション結果です。緑色が抵抗・コイルに加えている電源波形、黄色はコイル両端の波形です。コイルそのものは抵抗がありませんから、電流が流れても抵抗による電圧は発生しません。ここでは、入力電圧の変化時に電圧が発生しています。これは、磁場を生成・消滅するときに発生する電圧になります。



       特に、電圧を0に戻したとき発生する負電圧に注意して下さい。コイルの上側を負、下側を正にする方向で、これは、コイルに電流を流し続けるように働きます。

    2. RL回路の電流
       回路に流れる電流を調べるために、以下のように回路を組み替えます。抵抗の電圧波形は電流の波形と同じです。


      黄色の電流波形から、電流の「流れにくさ」、「切りにくさ」がよくわかります。



  3. RL回路の交流解析

    1. 交流解析
      コイルの電圧の変化時に発生しますから、常に変化する交流に対してはコイルは定常的な「抵抗」を持ちます。
      下図の回路で電流特性を調べます。

       緑の電圧波形に対して、電流波形は少し遅れていることに注意して下さい。



    2. コイルの抵抗値
       コイルの「抵抗値」は、周波数を f 、コイルのインダクタンスを H とすると、2πf L となります。ただし、この「抵抗値」は抵抗やコンデンサのもつ「抵抗値」とは異なりますから、直列に接続しても 「加算」 できるわけではありません。

  4. コイルの利用

    1. 磁力を利用
       コイルの最大の応用は、磁力を利用したモータやソレノイド(磁石)でしょう。力のあるコイルはインダクタンスも大きいので、逆起電力に対する注意が必要です。

    2. 雑音防止
       変化の激しい信号は、電磁波として飛び出し別の信号線に誘導ノイズを引き起こします。コイルは激しい変化を阻止しますから、電源など、信号変化の少ない場所に直列に挿入して雑音を抑えることができます。

    3. 発振回路
       コイルとコンデンサの共振特性を利用すると、指定した周波数の発振回路を作成したり、特定の周波数のみを取り出すフィルタ回路に応用できます。

    4. 昇圧回路
       インダクタンスの逆起電力を利用して、省電力の昇圧回路に利用できます。コイルの電流をスイッチングし、逆起電力でコンデンサに充電して電源より高い電圧を生成することができます。