まえがき

 これまで、小規模のTTL IC を用いて 8bit のコンピュータ周辺回路作りから始まり、いろいろな電子回路・ディジタル回路を実験・作成してきました。最近では、モジュールの接続が進化・豊富となり、目的とするディジタルシステムの作成が容易に・安価にできるようになってきました。
 少し前のミニコンピュータ規模の機能を持った組み込コンピュータが数百円で入手できるようになり、接続可能な普通のコンピュータにはない機能をもった周辺モジュールがあふれています。「マイコンピュータ」が個人所有の既製のコンピュータでなく、「自分で作成した独自の機能とインタフェースをもったコンピュータ」にかわりつつあります。ただ、便利になった、使いやすくなった、ものの「使いこなす」には使う相手の最低限の理解が必要です。

 ここでは、子供でも使える「入門用の組み込みコンピュータ環境」である Arduino UNO とその周辺装置を紹介しながら、各モジュールの原理や特徴を紹介していきます。つなげばすぐ使える便利な「シールド(出来上がりキット)」でなく、理解しながら自分で組み立てる説明書、を目指しました。シールドやライブラリも優れたツールですが、新しく作り出す環境ではないかと思います。

 1節ではArduino環境の導入、2節では実際に部品を接続してのLED点滅回路、3節ではスイッチによる入力回路を紹介します。4節ではシリアル通信、5節では「割り込み」機能を紹介します。「割り込み機能」は Arduino では影の機能として使われていますが、表に出した紹介がすくないような気がします。
  6、7,8節 はアナログ入力の紹介です。AD変換や「レファレンス電圧」の利用法も紹介しています。9節は「パワー制御」の入門的なお話で、10・12・13、での動くデバイスへの基礎となります。
 14,15,16、17節は表示デバイスの紹介で、液晶や、数字・ドットパターン表示を紹介します。17節からは、UNOではなく、小型で組み込みに便利な MINI モジュールを使用しています。18節の LEDバーはそのあとのシリアル通信の基礎となります。19節で SPI 通信のSDカードを紹介し、20節以後は I2C を利用したデバイスの紹介になります。I2C液晶・高精度温度モジュール、加速度センサー、最後は時計モジュールの紹介です。

 ハードウエアはいろんな「雑学」が役に立ちます。各説の最後の「発展」項目がいくつかは紹介しましたが、忘れている大事な話がたくさんありそうです。また、ネットワーク関連や、アナログ・実装関連で、まとめができていない事項もたくさんあります。続編で続けていくつもりです。

 このテキストは、大学のゼミの皆さんと一緒に勉強した内容が中心です。皆さんの質問や動作した時の笑顔が仕事を続ける支えになりました。また、このテキストの一部や電子化は娘の「彩」の仕事です。ありがとうございます。