電源・電力
組み込みコンピューターを携帯型にする場合、バッテリー(電池)が必要となります。一時的な使用なら使い捨ての電池でも良いかもしれませんが、繰り返し利用する場合は、充電可能な電池を考慮する必要があります。ここでは、バッテリーを含めた電力の問題を解説します。
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電池の容量
単位時間当たりの電力の単位は 電力で 電圧 * 電流 で計算できます。通常、電池の容量は電圧は一定として、電流*時間で表現されます。単3アルカリ電池の場合、1800mAH程度ですが、これは 90mA
の電流で利用すると20時間(H)利用できることを意味します。比較的利用しやすい電池の電圧と容量(目安)は以下のようです。NiH 電池は充電可能な電池です。
単3アルカリ電池 1.5V 1800mAH
単4アルカリ電池 1.5V 700mAH
単3NiH充電池 1.2V 2000mAH
単4NiH充電池 1.2V 900nAH
006Pアルカリ電池 9V 300mAH
CR2032ボタン電池 3V 220mAH
LR44ボタン電池 1.5V 100mAH
体積当たりの充電容量が大きいのは、LiPo(リチウム系)電池ですが、過充電や過放電で材料が破壊され、発火の危険もあるので、慎重な取り扱いが必要です。LiPo 電池を充電や電圧モニターをするモジュールは入手可能です。
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電池ボックス
実験用には電池ボックスが便利です。単3、単4 電池を2または3本収納し、引き出し線をブレッドボードに差し込み可能な電池ボックスが市販されています。スイッチ付きが便利です。
電池ボックス見本
UNO を電池で手軽に動作させたい場合、簡単なものでは単3電池2本で、USBケーブルへの電圧出力(5V)を行う電池ボックス(”百円均一” セリエ:USB
チャージャー )が利用できます。
USB Charger
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DC-DCコンバータ(昇圧型)
スペースの問題で、電池1本で 3V の電源がほしい、あるいは 電池2本で 5V の電源が必要な場合、DC-DCコンバーターモジュールが利用できます。下図は昇圧型のDC-DCモジュールで
1.2 Vの入力で 3V で 100mA、5V なら 80mA 程度出力可能です。効率、安定度、最大電流、などで多くの種類のモジュールが市販されています。電池1本でフルカラーLEDを点灯するにも、昇圧型のDC-DCモジュールが必要です。
昇圧DC-DCモジュール 3.3V レギュレータ
昇圧モジュールの多くはコイルへの電流を遮断したとき発生する、逆起電力を利用しています。
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DC-DCコンバータ(降圧型)
5V かの電源で 3.3V のデバイスを利用したい、あるいは,安定度の悪い 9V のAC アダプターから 5V の安定化した電圧が必要な場合、「3端子レギュレーター」が利用できます。
出力電圧、最大出力電流、の違いで多くの種類があります。また、入力電圧は出力電圧より高くなくてはいけませんが、この電圧差が少ない「低損失型」もあります。
電圧は、3.3V、5V、9V、12V、が中心です。電流は、100mA、500mA、1A、などです。UNO には 5V/1A と、3.3V/100mA
が組み込まれています。
下図は xc6202P332TB で、3.3V 最大 150mA の電流を取り出すことができます。端子は、上からVout、Vss、Vin で、入力と出力端子に
1μF のコンデンサーを付加します。
3端子レギュレータ 回路
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ACアダプター
家庭用の電源から安定化した直流電圧を出してくれます。 3.3V、5V、9V、12V などを用意しておくと便利です。UNO の電源端子には 9V を接続します。UNO 内部で 「3端子レギュレーター」により 5V に変換します。一般にACアダプターは使用電流の変化で電圧の変化が大きくなりますから、3端子レギュレータのよる「安定化」が必要です。
ACアダプター 5V 2A 2.1mジャック
DC5V のアダプター出力を直接 UNO に入力するには DCIN 端子(GND端子の右)を利用します。ACアダプターの電源をブレッドボードに接続するには、2.1mm
のジャックを利用します。
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瞬間電力供給(パスコン)
MPUや高機能なディジタル回路は瞬間的に大きな電力を必要とする場合があります。このような場合、電源が遠かったり配線が長い場合、電力供給が不安定になり誤動作を引き起こすことがあります。常識的な措置として、最大でmA以上の電流を必要とするディジタルモジュールの電源とグランドの間に近接して、0.1μF
のコンデンサーを接続することが推奨されます。
コンデンサーは電子を蓄積できる素子で単位はF「ファラッド」です。1Fは 1Aを1秒流す電気量で、0.1μFは 1μ秒の間に0.1A流せる容量となります。ここで紹介している各種のモジュールにもすべて電源端子に 0.1
μF のコンデンサを付加する法が安全です。
電池の交換時も給電を続けたい場合、「電気2重層コンデンサー」が利用できます。図は3.3Vで 0.22F の容量があります。
セラミックコンデンサー 電気2重層コンデンサー
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MPUの電力制御(トランジスタ)
MPU の端子で流すことができる電流は最大 25mA で、小さなLEDを点灯するには十分ですが、大きな(複数の)LEDや小型のモーターの電流を直接制御することはできません。大電力の制御を行うにはトランジスタ素子を利用します。たとえば
2SC2120 は
30Vで800mAの電流を制御できます。他にも多くの種類のトランジスターがありますが、電圧と電流の条件を満たせば、同じような回路で利用できます。
端子は 左から E(エミッター)、C(コレクター)、B(ベース)になります。BからEにMPUのディジタル出力端子から10mA程度の電流を流すと、C-E
間が導通し C から E 方向に最大で 800mA 程度の電流を流すことができます。回路図で、下のラインは GND(UNOのGNDと接続) 、B
に接続する抵抗の左端に UNO のディジタル出力を接続します。抵抗は330-470オーム程度です。トランジスターの C 端子に LED などオンーオフ制御する対象を接続します。LEDに接続する電源(VCC)は
UNO とは別の電源でもかまいません(大電流の場合、別の電源を利用します)。
トランジスタ スイッチ回路
複数のトランジスタを利用する場合には、TD62064(4回路:「ステッピングモーター」の章参照)やTD62083などが利用できます。
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電力制御トランジスタ(MOS型)
トランジスタには バイポーラー型とMOS型があります。バイポーラ-型の方が速度性能は良いのですが、MOS型の方が作成が簡単のため、大電流制御に向いています。MOS型のトランジスタは
S(ソース)、D:(ドレイン)、G(ゲート)の3端子で構成されます。G に 高い電圧をかけると、DーS 間が導通します。
2SK2232 は 少し大型の MOS トランジスタで D-S 間の最大電圧 60V、電流は 25A です。左から1番がG、2番がD、3番がS 端子です。
2SK2232 端子
下図がスイッチ回路で、左の端子を UNO のディジタル出力端子に接続します。VCC が電源で D(ドレイン) との間に制御するデバイスを接続します。10KΩ
の抵抗は G 電圧が不安定(接続がない)のとき、D-S 間が導通するのを防ぎます。MOS型は G 電圧のみで ON-OFF しますので 左の端子電圧が不定の場合、G
電圧を 0 にして D-S 間をオフに保ちます。100Ω の抵抗は「安定動作」が目的ですが、省略してもかまいません。
MOSスイッチ回路
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リレーによる接続
リレーは「継電器」ともよばれ、スイッチング速度が遅くても良いが「良質」な接続が必要なばあいに適しています。リレーは通常、コイルに電流を流して、スイッチ回路を機械的にオンーオフします。
リレーの例として、941H-2c-5D を紹介します。1 から 16 番のコイルの端子に電流をながします。同時に動作する2系統の接点(スイッチ)があります。センターが
4(13)でこれが、6(11) または8(9) の端子と接続します。NO(Normal Open)の端子が、コイルに電流を流すとオンになります。
このリレーではコイルの電圧は 5V 電流も 30mA 程度です。接点の電圧・電流は 30V で 2A 、120Vで1A ほど流せます。リレーは金属接点ですから、微弱な信号を流すことができます。絶縁も容易ですから高い電圧をスイッチできます。欠点は、動作速度が遅い(6mS)こと、接点の劣化による寿命はあること、などです。接続回路は
「DCモーター」の章を参照してください。
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発展
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リポ充電池は何に注意する必要がありますか?
リポ電池は、過充電だけでなく過放電もすると電極が壊れます。電圧が一定以下になったら、電流供給を停止する必要があります(電圧監視モジュール:TCP809
)。また、充電も充電電流を範囲内に抑える必要があります(充電モジュール:LTC4006)。
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トランジスタのオン抵抗とは何ですか
トランジスターがオン状態の時の C-E 間(D-S)間の抵抗の値のことです。理想的には 0 が望まれますが、小型の バイポーラ型では 数Ω
の抵抗が残ります。大型の MOS 型 では 0.1 Ω以下です。